2005年ノーベル経済学賞
受賞理由
ゲーム理論の分析を通じて対立と協力の理解を深めた功績
受賞者
アメリカ合衆国,
イスラエル
アメリカ合衆国
解説
人はときどきケンカもするし、仲良く助け合うこともあります。ロバート・オーマンさんとトーマス・シェリングさんは「ゲーム理論」という考え方を使って、人と人がどうしたら争いをやめたり協力できたりするかを調べました。ゲーム理論では、みんながどんな手を選びそうかを表に書いて比べます。たとえば、友達とお菓子を分けるとき、お互いに少しがまんすれば両方がハッピーになれることがわかります。二人の研究のおかげで、国同士の話し合いや学校でのルール作りにも役立つヒントが生まれました。難しい計算をしているように見えますが、実は「どうすればみんなが得をするか」を考えるときの道具箱なのです。
関連キーワード
ゲーム理論
戦略的相互作用を数学的に分析する学問分野。プレーヤー、戦略、利得という三つの要素で状況をモデル化し、合理的行動の帰結を予測する。経済学のみならず、生物学、政治学、コンピュータ科学など幅広い領域で応用される。オーマンとシェリングの研究は、この理論を現実社会の対立と協力の問題に結び付けた点で画期的である。
繰り返しゲーム
同じゲームが複数回プレイされる状況。プレーヤーは過去の行動を観察できるため、短期的な利得を犠牲にして長期的協力を選ぶインセンティブが生じる。オーマンのフォーク定理は、割引率が高いほど協力均衡の集合が広がることを示す。カルテルの維持や国際条約の履行分析に不可欠な概念である。
フォーカルポイント
強い利害対立がなくとも、失敗すると大きなコストが生じる協調状況で、人々が自然と選択する解のこと。シェリングは文化や慣習が共有されると、理論予測より高い確率で協調が成立することを示した。言語や信号はフォーカルポイントを形成し、交通ルールや市場慣行の成立を支える。
共通知識
「Aを皆が知っており、皆が皆が知っていることを知り…」という無限連鎖まで含めた知識状態。オーマンはこの概念を集合論で定式化し、合意不能定理や相関均衡の解析に応用した。情報の公開や信頼性評価を判断する理論基盤を提供する。
相関均衡
ナッシュ均衡を拡張し、外部シグナルに基づきプレーヤーが戦略を条件づけられる枠組み。無作為に配られたカードや仲裁者の助言が均衡集合を拡大し得ることを示す。情報デザインやオークション理論で重要な道具となっている。
credible threat(信じられる脅し)
相手が実際に実行すると信じられる制裁や行動。シェリングは脅しの実効性を高めるために自己拘束や選択肢の削減が有効であることを指摘した。核抑止や価格戦争の戦略分析に用いられる中心概念。
フォーク定理
無限繰り返しゲームで、一定の条件下ではほぼあらゆる利得ベクトルが均衡になり得るという命題。オーマンは測度論的手法を用いてこの定理を厳密化した。長期関係における協力の多様性を説明する理論的支柱。
囚人のジレンマ
個々には裏切った方が得だが、互いに裏切ると全体が損をする典型的な非協力ゲーム。繰り返しプレイでは“しっぺ返し”戦略などにより協力が成立し得る。二人の受賞者の理論は、このジレンマを現実社会でどう克服するかを示す。