2007年ノーベル経済学賞
受賞理由
メカニズムデザインの理論の基礎を確立した功績
受賞者
アメリカ合衆国,
ポーランド
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
解説
買い物をするとき、人はそれぞれ本当はいくらまでなら払ってもよいかを心の中で考えています。でもその気持ちは相手にはわかりません。ハーヴィッツさんたちは、みんながうまく協力できるように、"ルール作り"の大切さを教えてくれました。たとえば、オークションという仕組みを使うと、物を一番上手に欲しい人に渡すことができます。メカニズムデザインという言葉は、みんなが正直に行動したくなるルールを考える学問だよ、という意味です。
関連キーワード
メカニズムデザイン
望ましい社会的結果を実現するために、参加者の私的情報と戦略的行動を前提に制度やルールを逆算的に設計する研究分野。ゲーム理論の“逆問題”と呼ばれ、経済政策やオークション、公共財供給など幅広い応用を持つ。参加者が自分の利益を追求しても社会的に効率的な結果が得られるようにすることが目的である。1960年代にハーヴィッツが基礎を築き、その後マスキン、マイヤーソンらが完全実現可能性や最適オークションなどを体系化した。現在ではコンピュータサイエンスのアルゴリズム的機構設計にも発展している。
インセンティブ互換性
各参加者が自分の私的情報を正直に報告することが最適戦略となる制度の性質。これが満たされれば、メカニズム設計者は参加者の行動を監視しなくても正しい情報を引き出せる。ハーヴィッツが概念を導入し、グローブス・メカニズムやVCGオークションなどが具体例として知られる。インセンティブ互換性は効率性や予算均衡と同時に達成できない場合も多く、トレードオフ分析が重要となる。近年は多期間モデルやロバスト設計で再検討が進んでいる。
レベレーション原理
マスキンやマイヤーソンが一般化した重要結果で、最適メカニズムを探す際には、参加者が直接自分の情報を報告する“直接メカニズム”を考えるだけで十分であると示す。これにより膨大な制度空間の探索が大幅に簡素化され、最適オークションや最適規制問題の解析が可能になった。理論的にはベイジアンナッシュ均衡の存在を前提とし、実務的には報告のコストや認知負荷を考慮する拡張研究が行われている。
実現可能性理論
設計者が望む社会的選択規則が、メカニズムのあらゆる均衡で達成される条件を特定する理論分野。マスキンの“モンジョー性+非独占権”定理が代表的成果で、選挙制度や公共財制度などで複数均衡を排除する設計指針を提供する。近年は部分倫理性、進化安定性、メカニズムの強靱性(ロバスト性)を考慮した一般化が進む。
非対称情報
取引当事者が保有する情報が異なる状態で、逆選択やモラルハザードの原因となる。メカニズムデザインは非対称情報下でも効率的な制度を構築する理論的手段を提供する。保険、市場取引、規制、企業契約などで中心概念となり、情報の経済学を発展させた。
オークション理論
財や権利を競争入札で配分する仕組みを分析する分野。マイヤーソンの収入同値定理や最適オークション設計が基礎を成し、周波数ライセンスやオンライン広告枠の販売に応用される。形式により第一価格、第二価格、英式、オランダ式などがある。入札者のリスク態度や共通価値モデルなども研究対象である。
社会的厚生
個人の効用を集計して社会全体の満足度を測る概念。メカニズムデザインでは、情報制約や予算制約のもとで社会的厚生を最大化するルールを探索する。パレート効率、カリャニコプ効率など複数の基準があり、分配の公平性と効率性のトレードオフが問題になる。
公共財
消費が非排除・非競合的である財・サービス。効率的供給には市場メカニズムが不十分な場合が多く、課税や投票を取り入れたメカニズムが必要になる。グローブス・ラジャードやクラブ理論などが代表的分析枠組み。メカニズムデザインはフリーライドを防ぎつつ望ましい供給水準を実現する方法を提示する。
規制理論
天然独占や外部性を伴う産業に対し、情報格差を前提に料金や投資水準を設計する分野。ラフォン=ティロール型メカニズムやメニュー契約は企業に真実を報告させるための道具である。メカニズムデザインは社会的厚生と企業インセンティブのバランスをとる枠組みを提供する。
ゲーム理論
複数の意思決定主体が相互作用する状況を数理的に分析する学問。メカニズムデザインはゲーム理論の応用であり、均衡概念(ナッシュ均衡、ベイジアン均衡など)を利用して制度の成否を評価する。ゼロサムゲームから協力ゲーム、進化ゲームまで幅広い派生分野が存在する。