1911年ノーベル化学賞

受賞理由

ラジウムおよびポロニウムの発見とラジウムの性質およびその化合物の研究

受賞者

マリ・キュリー
マリ・キュリー

ポーランド立憲王国ポーランド立憲王国, フランスフランス

解説

マリ・キュリーさんは、目で見えない特別な光(放射線)を出す石から新しい金属を見つけました。それがラジウムとポロニウムです。彼女は何トンもの黒い石(ピッチブレンド)をこわして、ほんの少しの金属を取り出しました。この金属は暗い所で光り、周りの物を変える力を持っています。今では病気を治すときにも使われる大切な発見です。

関連キーワード

ラジウム

アルカリ土類金属に属する元素(原子番号88)。強い放射能と自己発光を示し、崩壊によりラドンガスを生成する。20世紀初頭にはがん治療や夜光塗料、標準線源として利用されたが、毒性のため現在は取り扱いが厳しく規制されている。ラジウムの発見は原子核崩壊エネルギーの大きさを示す実例となり、核物理学発展の起点となった。

ポロニウム

原子番号84の半金属元素で、天然に存在するものはほぼすべてウラン系列の崩壊産物。強力なアルファ線放出体であり、微量でも高い放射毒性を示す。発見当時は元素同定のために化学的性質と放射能を併用する手法が確立された。現在は静電帯電除去ブラシや中性子源の構成要素として限られた用途で用いられる。

放射能

不安定な原子核が自発的にエネルギーを放出して別の核種へ変わる現象。キュリー夫妻は放射能を電離能力で定量し、物質固有の特性として扱った。放射能研究はアルファ・ベータ・ガンマ線の発見や原子核モデルの発展へつながり、医学・考古学・地球科学など広範な応用を生んだ。

アルファ線

ヘリウム原子核(2個の陽子と2個の中性子)で構成される荷電粒子線。空気中を数センチで停止し透過力は弱いが、組織への線エネルギー付与(LET)は大きい。ラジウム・ポロニウムは強力なアルファ線源として、放射壊変の階層構造や元素変換の概念を実証した。

ピッチブレンド

主成分は酸化ウラン(IV)で、トリウムや希土類・ラジウムなど多くの副成分を含む黒色の鉱石。1890年代に最も放射能が強い天然物質として注目され、キュリー夫妻の研究試料源となった。膨大な量のピッチブレンド残渣からラジウムが抽出されたことは、元素濃縮技術の初期例である。

同位体

原子番号は同じでも質量数が異なる原子核のこと。放射能研究から導かれた概念で、特定核種の化学的分離を可能にした。ラジウムやポロニウムの崩壊系列解析は同位体科学発展の礎を築き、医学用ラジオアイソトープの応用へも発展した。

キュリー(Ci)

1秒間に3.7×10^10回の壊変を起こす放射能の単位で、元々は1グラムのラジウムの放射能に相当付置された。国際単位系(Bq)が導入されるまで医学・工業で広く使用された。

放射壊変系列

重い親核種が連続して崩壊し、最終的に安定核種へ至る一連の核種列。ラジウムは238U系列の途中に位置し、その研究によって系列概念が確立した。崩壊系列解析は年代測定や核燃料管理に応用される。

放射線治療

高エネルギー放射線でがん細胞のDNAを損傷させ、増殖を抑える医療手段。ラジウム針やラドン種子を腫瘍近傍に配置する内部照射が20世紀初頭に導入された。現在は加速器による外部照射や手術支援など高度化しているが、原点はキュリー夫人の治療実験にある。

蛍光

物質が高エネルギー放射や光を吸収した後、可視光として再放出する現象。ラジウム塩は暗闇で青白く光る蛍光を示し、放射エネルギーが光に変換される例として当時人々を驚かせた。この性質は夜光塗料やスクリーン検出器の開発につながった。