1945年ノーベル化学賞

受賞理由

農業化学および栄養化学における研究と発明、特に飼料保存法の開発

受賞者

アルトゥーリ・ヴィルタネン
アルトゥーリ・ヴィルタネン

フィンランドフィンランド

解説

牛や羊が食べる草は、長く置いておくと腐ってしまいます。ヴィルタネンさんは草をすっぱい状態にして保存する方法を考えました。すっぱいレモンの汁にはばい菌が増えにくいのと同じで、草の中のばい菌も増えなくなります。この方法を使うと、冬でも家畜に安全なえさをあげられるようになりました。農家の人たちは食べ物をムダにしなくてすみ、とても助かりました。

関連キーワード

サイレージ

刈り取った牧草やトウモロコシを空気を遮断して発酵させた飼料。水分が多くても栄養が失われにくく、家畜にとって消化しやすい。酸性環境を利用して腐敗菌を抑制する点が特徴で、ヴィルタネンの研究はサイレージ製造を科学的に裏付けた。現在、世界中の酪農・肉牛生産で必須の保存技術となっている。

AIV法

ヴィルタネンが考案した酸添加型の飼料保存技術。ギ酸やその塩を用いて短時間でpHを下げ、嫌気的条件下で有害細菌やカビの繁殖を防ぐ。従来の自然発酵型サイレージより栄養損失が少なく、寒冷地や多雨地域でも安定した品質を確保できる。名前はArtturi Ilmari Virtanenの頭文字に由来する。

飼料酸性化

pHを調整して飼料中の微生物環境を制御する手法。酸性下では病原性クロストリジウムや大腸菌が生育しにくくなるため、保存性と安全性が向上する。家畜の腸内フローラにも影響し、消化吸収を助ける有益菌が増えることが知られている。酸性化は抗生物質への依存を減らす代替戦略としても注目されている。

発酵抑制

飼料中で起こる望ましくない酪酸発酵やタンパク質分解を防ぐプロセス。pH、温度、水分活性などを制御することで乳酸菌優位の環境を維持し、エネルギーロスと悪臭の原因を抑える。ヴィルタネンは化学的酸性化によって発酵抑制を定量的に実証し、家畜飼料のエネルギー効率を高めた。

農業化学

農業生産に関わる化学現象を研究する学問分野。土壌、肥料、農薬だけでなく、飼料や食品の保存・加工も扱う。ヴィルタネンの業績は農業化学が栄養学や微生物学と連携して実用技術を生む好例であり、学際研究の重要性を示している。現代では環境負荷低減や持続可能性の視点からも注目される。