2002年ノーベル化学賞(2)
受賞理由
生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発(溶液中での生体高分子の3次元構造の決定に関する核磁気共鳴分光法の開発)
受賞者
クルト・ヴュートリッヒ
スイス
解説
タンパク質は折り紙のように複雑に折りたたまれて働いています。ヴュートリッヒさんは、水の中に浮かんでいるタンパク質を壊さずに“形”を見る方法を見つけました。強い磁石とラジオの電波を使って、タンパク質の中の原子から小さな信号を集めるのです。その信号をパズルのピースのように組み合わせると、立体模型ができあがります。この地図があると、薬がどこにくっつくかを調べることができます。だから新しい薬づくりや病気のしくみ解明にとても役立っています。
関連キーワード
核磁気共鳴分光法
強磁場下で原子核スピンが吸収・放出する電磁波を解析し、分子構造を決定する手法。非破壊・溶液下での測定が可能で、生体高分子研究に不可欠である。
三次元構造決定
タンパク質内の多数の距離・角度情報を用いて原子配置を計算し、立体モデルを得るプロセス。機能解析や薬剤設計の出発点となる。
逐次帰属法
NMRピークをアミノ酸残基ごとに対応付ける戦略。隣接残基間の相関をたどることで、複雑なスペクトルから一次配列上の位置を特定する。
二次元NMR
化学シフトを二つの周波数軸に展開し、核間相関を可視化するスペクトル法。情報量が飛躍的に増え、高分子解析の基礎となった。
距離幾何学法
測定された核間距離を数学的拘束として用い、座標空間で整合する立体構造を計算するアルゴリズム。NMR構造決定の要となる。
溶液構造
結晶ではなく水溶液中で観測されたタンパク質の立体配置。生理環境に近く、柔軟な部位や動的変化を評価しやすい。
タンパク質ダイナミクス
ピコ秒から秒オーダーで起こるタンパク質の運動や構造揺らぎ。NMR緩和測定や交換実験で解析され、酵素機構やアロステリック制御の理解に寄与する。