2003年ノーベル化学賞(1)

受賞理由

細胞膜に存在するチャネルに関する発見(アクアポリンの発見)

受賞者

ピーター・アグレ
ピーター・アグレ

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

私たちの体の細胞は水を出し入れして元気を保っています。ピーター・アグレさんは、水だけを通す特別な小さな穴を見つけました。この穴は「アクアポリン」と呼ばれ、水がすばやく通れるトンネルのようなものです。もしこの穴がなければ、細胞はふくらんだり縮んだりして困ってしまいます。だからアクアポリンは細胞がちょうどよい水の量で生きるための大切な道なのです。

関連キーワード

アクアポリン

アクアポリンは水分子を選択的に透過させる膜タンパク質の総称です。ヒトだけでも少なくとも13種類が知られ、組織特異的に発現しています。六つの膜貫通ヘリックスと二つのNPAモチーフが基本構造で、プロトンを遮断しながら高速な水輸送を行います。腎臓、脳、汗腺などの水分調節に不可欠で、遺伝的欠損や自己抗体により疾患が発症します。バイオミメティック膜や創薬ターゲットとして産業・医療応用が期待されています。

オスモシス(浸透)

オスモシスは半透膜を介して水が濃度差を打ち消す方向へ移動する現象です。植物の膨圧維持や人間の腎臓での尿濃縮に不可欠です。アクアポリンはオスモシスを高速化し、細胞が急速な環境変化に適応するのを助けます。浸透圧が崩れると細胞は膨潤や萎縮を起こし、機能障害が生じます。工業的にも逆浸透膜などの水処理技術に応用されています。

細胞膜

細胞膜はリン脂質二重層からなる生体膜で、選択的透過性を持つバリアです。脂質部分は疎水性で、イオンや極性分子はそのままでは通過しにくい特徴があります。そのためチャネルやトランスポーターが配置され、特定分子だけを通します。アクアポリンは水専用ゲートとして細胞膜の透過性を補完します。膜の流動性やラフト構造はチャネル機能に影響を与えます。

NPAモチーフ

NPAモチーフはアクアポリン配列に保存されたアスパラギン(N)、プロリン(P)、アラニン(A)からなる短配列です。チャネル中央で二つのNPAが対向し、正電荷ポケットを形成します。これにより水分子が双極子反転しつつ通過し、プロトンのリレーを阻害します。モチーフ変異は水透過性低下や疾患に直結します。NPAは他のMIPファミリーでも特徴的指標として用いられます。

バソプレシン

バソプレシンは下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンです。腎集合管細胞の受容体に結合し、cAMP経路を活性化してAQP2を細胞膜へ移動させます。その結果、水の再吸収が増え、尿量が抑制されます。バソプレシン欠損や受容体変異は尿崩症を引き起こします。合成アナログは臨床で水バランス是正に使用されています。

リポソーム実験

リポソームは人工的に作られたリン脂質小胞で、膜タンパク質機能解析に用いられます。アグレはアクアポリンをリポソームに再構成し、水透過速度を測定して機能を証明しました。浸透圧差をかけると、チャネル量に比例して膨潤速度が増すことが観察されます。この手法はトランスポーター薬理や膜透過性材料の評価にも応用されます。近年は蛍光プローブと組み合わせた高感度測定が進んでいます。

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