2003年ノーベル生理学・医学賞

受賞理由

核磁気共鳴画像法に関する発見

受賞者

ポール・ラウターバー

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

ピーター・マンスフィールド
ピーター・マンスフィールド

イギリスイギリス

解説

病院で大きなドーナツのような機械に入って写真を撮る検査をMRIと言います。この機械は強い磁石とラジオのような電波を使い、体の中を痛くなく写します。ラウターバーさんとマンスフィールドさんは、磁石の力をうまく変化させて体の中の水を地図のように描く方法を見つけました。そのおかげで、骨ではなく柔らかい脳や筋肉もはっきり見ることができるようになりました。今では多くの病院で毎日使われ、けがや病気を早く見つける手助けをしています。痛みも放射線もなく安心して受けられる検査なので、子どもから大人までみんな役立っています。

関連キーワード

核磁気共鳴

原子核が強い磁場中で特定の周波数の電磁波と共鳴する現象です。1940年代に発見され、化学構造解析に広く使われます。水素原子核が最も感度が高く、生体内でも非常に豊富なため医学応用の中心になりました。共鳴周波数は磁場強度に比例し、Larmor周波数と呼ばれます。この物理原理がMRIの根幹にあります。

MRI

磁気共鳴を利用して体内の断面画像を取得する装置です。強力な超伝導磁石と送受信用のRFコイル、位置情報を付与する勾配コイルから構成されます。プロトン密度やT1・T2緩和時間の違いを用いて組織コントラストを得ます。放射線を用いないため被ばくがなく、安全性が高いとされています。神経、筋骨格、心血管など多領域で診断標準になっています。

スピン

スピンは量子力学的な角運動量で、原子核や電子が持つ固有の性質です。MRIでは主に水素原子核のスピンが信号源となります。外部磁場中でスピンはエネルギー状態が分裂し、わずかな人口差がマクロな磁化を生みます。RFパルスでスピンを傾け、緩和過程を検出することで画像を作ります。スピン密度や配向は組織状態を反映します。

勾配磁場

勾配磁場は空間的に強さが変化する補助磁場で、X・Y・Z方向に独立して印加されます。この磁場によって位置ごとにLarmor周波数が異なり、周波数や位相から空間情報を符号化できます。ラウターバーの着想により、勾配を変化させながら信号を測定するとk空間がサンプリングされます。高速スキャンを実現するには勾配コイルの立ち上がり速度と最大強度が鍵になります。勾配磁場技術は拡散計測や平行撮像にも応用されています。

T1/T2 コントラスト

T1は縦緩和時間、T2は横緩和時間を表し、異なる組織で値が大きく変わります。パルスシーケンスのタイミングを調整すると、画像の明るさをT1やT2の差に依存させることができます。たとえばT1強調像では脂肪が明るく脳脊髄液が暗く、T2強調像ではその逆になります。このコントラストは病変の性状判定に重要で、浮腫や腫瘍、炎症の検出に役立ちます。臨床医は目的に応じて適切なシーケンスを選択します。

非侵襲的診断

非侵襲的とは体を切ったり傷つけたりしない方法を指します。MRIは磁場と電波だけを使うため、皮膚に針を刺す必要も放射線被ばくもありません。そのため妊婦や子ども、高齢者でも比較的安全に検査できます。組織の機能や血流も評価でき、手術前の計画や治療効果のフォローに重要です。医療の質を高め、患者負担を減らす代表的な技術です。