1972年ノーベル経済学賞
受賞理由
一般的経済均衡理論および厚生理論に対する先駆的貢献
受賞者
イギリス
アメリカ合衆国
解説
世の中には商品を売るお店や買う人がたくさんいます。ヒックスさんとアローさんは、みんなが売り買いしても全員がちょうど満足できる“バランス”がうまく取れるかどうかを調べる方法を考えました。このバランスを「均衡」と呼び、どの商品も売れ残らず足りなくもならないイメージです。また、そのバランスが人々の幸せにとって本当に良いかどうかも研究しました。これにより、どうすれば社会がより良くなるかを考える手がかりが生まれました。
関連キーワード
一般均衡理論
複数の市場が同時に成立する価格・数量の組を研究する理論。ウォルラス的調整過程に基づき、需要超過関数がゼロになる点の存在・一意性・安定性を解析する。ヒックスとアローの研究により、厳密な数学的枠組みが確立され、現代マクロや国際貿易の基盤となった。
厚生経済学
経済的資源の配分が社会の幸福に与える影響を評価する分野。パレート効率性と厚生定理を中心に、税制・補助金・公共財供給の政策効果を測定する。ヒックスは補償変化などの指標で個人厚生の変化を可観測化し、アローは社会的選択理論で集団意思決定の限界を示した。
パレート効率性
誰かを悪化させずに他の誰かを改善できる余地がない状態。厚生経済学の基本概念で、均衡の望ましさを判定する第一基準となる。ヒックスとアローは競争均衡がパレート効率的であることを示し、効率と公平の区別を明確にした。
社会的選択理論
個々の選好を集約して社会全体の意思決定を行う仕組みを分析する理論。アローの不可能性定理は、公平で論理的な投票制度を同時に満たすのが困難であることを証明し、政治経済学やメカニズムデザインに大きな影響を与えた。
ヒックス=アレン代替効果
価格変化による実質所得を補償したうえでの需要変化部分。需要の価格弾力性を理論的にパースし、消費者余剰や税負担分析で用いられる。ヒックスが厚生測定を精緻化する鍵となった概念である。
不可能性定理
アローが証明した、三つ以上の選択肢がある場合に合理性と公正さを同時に満たす社会的選択規則が存在しないという結果。これにより、政策決定過程における制度設計の制約条件が明示された。
エッジワース箱図
二人二財の交換経済を図示するツール。無差別曲線の接点がパレート効率的配分を示す。ヒックスはこの図を用いて厚生分析を視覚的に一般化した。
比較静学
パラメータ変動前後の均衡の差を分析する手法。ヒックスは双対性理論を用いて需要・供給の感度を体系化し、政策変更の効果予測を可能にした。
Arrow証券
将来の特定状態で1単位支払われる約束証券。アローはこれを用いて不確実性下の資産市場をモデル化し、市場完備性の概念を定式化した。
市場完備性
不確実な将来の全ての状態に対して取引資産が存在し、効率的なリスク分散が可能なこと。アロー=ドブリューの枠組みで明確化され、金融商品の設計原理になっている。