1973年ノーベル経済学賞
受賞理由
投入産出分析の発展と、重要な経済問題に対する投入産出分析の応用
受賞者
ソビエト連邦
解説
私たちの町では、パン屋さんが小麦粉を買い、その小麦粉を作る工場は農家から小麦を買います。レオンチェフさんは、このように「だれがだれからどれだけ買うか」を大きな表にしました。その表を使うと、パンがたくさん売れたときに小麦や農家の仕事がどれくらい増えるかが分かります。ドミノ倒しのように、一つの産業が動くと他の産業も動くことを示したのです。政府や会社は、この表を見てどんな仕事に力を入れるか考えやすくなりました。
関連キーワード
投入産出分析
各産業部門が他部門から購入する中間投入と最終需要への供給を行列で表し,経済の構造と波及効果を数量的に評価する手法である。レオンチェフが1941年に体系化し,国連基準の統計として各国が定期的に作成している。需要ショックや政策介入が生産・雇用・環境負荷に与える影響を推計できるため,産業政策やライフサイクル評価で用いられる。線形モデルのため計算が容易である一方,価格変化や技術革新を内生化しにくいという限界もある。社会会計行列や一般均衡モデルと組み合わせることで分析範囲を広げる研究が進む。
レオンチェフ逆行列
(I−A)^{-1} で表され,最終需要1単位当たりに必要な総生産量を示す行列である。冪級数展開により直接効果・間接効果・再帰効果が足し合わさっていることが理解できる。行列の各列合計は産業乗数を与え,経済波及効果の指標として用いられる。Hawkins–Simon条件により非負かつ有限であれば経済システムが存続可能と判断される。環境拡張モデルでは列ベクトルを環境強度とHadamard積することでフットプリントを算定する。
投入産出表
国や地域の産業間取引を行と列で示した統計表で,基準年単位で作成される。行は供給側,列は需要側を表し,中間取引と最終需要,付加価値,輸入などが区分される。30〜400部門程度に分類されることが多く,産業細分化の程度で分析精度が変わる。調査票や企業統計を突合しつつ行列間の不整合をRAS法などでバランシングして作成する。近年はサプライチェーンの国際化に対応して多地域版が整備され,研究者は世界経済の循環構造を比較できるようになった。
乗数効果
ある部門で最終需要が増加すると,他部門の生産や所得が鎖のように波及する現象を指す。投入産出モデルではレオンチェフ逆行列の列和がこの乗数になる。財政支出や輸出拡大の効果測定,地域経済活性化のシミュレーションなどで利用される。ケインズ型乗数とは概念的に近いが,本手法は産業間の物量フローに焦点を当てる点が特徴である。過大評価を避けるには輸入漏出や供給制約を補正する必要がある。
一般均衡モデル
多数の市場が同時に均衡するという理論枠組みで,ワルラスの均衡条件を拡張したもの。投入産出表を基礎データとしてCGEモデルを構築すると,価格調整と技術選択を内生化できる。これにより貿易政策や環境税の長期影響を分析可能になる。計算には数値最適化と補完問題ソルバーが用いられる。レオンチェフの固定係数モデルはCGEの特例とみなせ,両者の比較研究が行われている。
構造変化分析
経済の技術係数Aや最終需要yが時間とともにどう変化したかを比較し,産業構造の転換を定量化する研究分野である。ディコンポジション分析では要因を需要効果と技術効果に分け,炭素排出増減の原因解明に応用される。Shift-share法や行列対数差分法など複数の手法が開発されている。レオンチェフの枠組みを使うことで,政策ごとの寄与度を明確に評価できる。近年は機械学習と組み合わせ,係数変化をリアルタイム予測する試みも行われている。
環境投入産出分析
投入産出表にエネルギー消費量や排出係数を付加し,製品やサービスのライフサイクルで発生する環境負荷を計算する手法である。国境を越えた排出の帰属問題やカーボンフットプリントの測定に用いられる。IOモデルの線形性により,上流部門の隠れた排出を漏れなく集計できる利点がある。一方,技術係数固定という仮定は長期の技術革新を過小評価する可能性がある。複雑系モデルと統合し,時間動学と不確実性を扱う拡張研究が進んでいる。