1991年ノーベル経済学賞
受賞理由
制度上の構造と経済機能に於ける取引コストと財産権の発見と明確化
受賞者
アメリカ合衆国
解説
お店で物を買うときには、お金を払うだけでなく、列に並んだり、おつりを受け取ったりと、ちょっとした手間がかかります。コースさんは、このような“手間”を「取引コスト」と呼びました。また、物や土地が“だれのものか”をはっきり決めることを「財産権」と言います。取引コストが小さく、財産権がはっきりしていると、人や会社はスムーズに売ったり買ったりでき、社会全体がうまくまわるとコースさんは教えてくれました。
関連キーワード
取引コスト
市場で売買するときに発生する交渉、情報収集、契約作成、監視・執行といった費用。コースはこのコストをゼロとみなす従来理論を批判し、企業の成立や制度選択を説明する中心概念に据えた。取引コストを最小化する方法が経済組織の形を決めるという考え方は、垂直統合の分析からプラットフォーム経済の設計まで幅広く応用されている。
財産権
財や資源を使用・収益化・譲渡する権利の束。誰がどの権利を持つかを明確にし執行コストを低く保つと、当事者間での交渉が容易になり資源配分が効率的になる。コースは権利配置が交渉を通じて外部性を内部化する前提条件であることを示し、その後の法と経済学、環境経済学に大きな影響を与えた。
コースの定理
取引コストがゼロで財産権が完全に定義されていれば、外部性が存在しても当事者間の交渉によって資源配分は効率的になるという命題。実際には取引コストが正であるため、制度設計や政府介入が求められる点が重要な含意となる。経済学者や政策立案者が外部不経済対策を考える際の出発点として機能する。
外部性
ある経済主体の行動が、価格を通さずにほかの主体の利得に影響する現象。公害や騒音などの負の外部性、知識 spillover などの正の外部性がある。コースは交渉と財産権が外部性問題の解決策になりうると示し、課税・規制だけに頼らないアプローチを提案した。
制度経済学
経済活動を取り巻く法律、慣習、契約形態などの制度を分析対象とし、パフォーマンスへの影響を探る学派。コースの研究は“新制度派経済学”の礎となり、制度を内生化した理論モデルと実証研究の双方を発展させた。所有権制度、企業統治、政治経済などへの応用が活発である。
企業の境界
企業がどの取引を市場に委ね、どの活動を社内で行うかを決める範囲。取引コスト理論によれば、市場での調整が高コストになるほど企業は垂直統合や多角化を選択する。プラットフォーム企業やグローバル・バリューチェーンの研究にも重要な枠組みとなっている。