1998年ノーベル経済学賞
受賞理由
所得分配の不平等にかかわる理論や、貧困と飢餓に関する研究についての貢献
受賞者
インド
解説
お金や食べ物がみんなに公平に届いているかを考える学問が経済学です。アマルティア・センさんは、お金が少ない人や食べ物が足りない人がいるのはなぜかを調べました。彼は、国全体の平均だけを見ても本当の困りごとが隠れてしまうと気づきました。たとえば、クラスの平均点が高くても、勉強に苦しむ友だちがいるかもしれません。センさんの研究は、困っている人を早く見つけ、助ける方法を考えるヒントになっています。
関連キーワード
福祉経済学
福祉経済学は、資源配分が社会全体の幸福にどう影響するかを研究する経済学の分野です。効用や所得、機会といった指標を用いて公共政策の評価基準を設定します。センは情報基盤論を提示し、評価に使用する情報の種類(効用、財、自由など)が結論を左右することを示しました。これにより、従来の効用主義だけでは説明できない不平等の問題を分析できるようになりました。福祉経済学の成果は税制、社会保障、国際援助の設計に応用されています。
ケイパビリティ・アプローチ
ケイパビリティ・アプローチは、人々が「何を行い、何であり得るか」という潜在的な自由度を福祉評価の中心に据える概念です。所得や主観的満足度ではなく、実際に達成可能な機能の集合を重視します。センが提唱し、後にヌスバウムなどによって政治哲学にも広がりました。国連開発計画による人間開発指数や各国の福祉政策に応用されています。多次元的な貧困やジェンダー不平等の分析に強力な枠組みを提供します。
エンタイトルメント理論
エンタイトルメント理論は、個人がどの財を入手できるかを「権利束」として捉える分析方法です。センは飢饉の原因を、これらの権利束が崩壊し食料を取得できなくなることと位置づけました。この視点は、食料の総供給量が十分でも飢餓が起こるメカニズムを説明します。政策面では、価格安定策、雇用創出、食料補助券などの重要性が導かれます。災害経済学や開発研究で頻繁に用いられる概念となりました。
貧困指数
貧困指数は、貧困の程度や分布を数量化するための指標です。シンプルな人数比(Headcount)だけでは、深刻度の違いや不平等を捉えられません。Sen指数やFoster–Greer–Thorbecke指数は、貧困ギャップや分布を組み込んだ高度な測定を提供します。これらはSDGsの監視や各国の貧困削減政策の評価に用いられています。適切な指数選択は資源配分と政策優先順位を大きく左右します。
社会的選択理論
社会的選択理論は、個人の選好を集約し社会的決定を行う方法を研究します。アローの不可能性定理は、いくつかの条件を同時に満たす「完璧な」集約ルールが存在しないことを示しました。センは個人の基本的自由を考慮したリベラル・パラドックスを提示し、効率と自由のトレードオフを数量化しました。この理論は投票制度、公共事業の優先順位づけ、憲法設計などで応用されています。社会的選択理論は経済学と政治哲学をつなぐ重要な橋渡し役です。
人間開発指数
人間開発指数(HDI)は、寿命、教育、所得の3側面を組み合わせて国の発展度を評価する指標です。UNDPが1990年に導入し、ケイパビリティ理論の理念を実務に落とし込みました。指数化により、経済成長だけでなく人々の健康と教育が政策議論の中心になりました。HDIは毎年公表され、各国が自らの進歩や課題を把握する材料となっています。派生指標としてジェンダー不平等指数や多次元貧困指数などが開発されています。