2018年ノーベル経済学賞(1)
受賞理由
気候変動を長期的マクロ経済分析に統合した功績
受賞者
アメリカ合衆国
解説
地球が暑くなりすぎると、人や動物が困ってしまいます。ノードハウスさんは、お金の動きと地球の温度の変化を同じ表で計算できる仕組みを作りました。車や工場が出す二酸化炭素が温度を上げることを数字で示し、未来の気温まで予想します。その結果、地球を守るには「炭素税」という仕組みで二酸化炭素を減らすのが大事だと分かりました。私たちが安全に暮らし続けるためのヒントをくれた研究です。
関連キーワード
統合評価モデル
経済、気候、エネルギーなど複数のサブシステムを同時に解析するモデルで、将来シナリオを数値的に比較できる。ノードハウスのDICE/RICEが先駆で、現在は複数地域・確率気候感度を伴う IAM へ発展。政策シミュレーションや炭素価格の最適パス計算、損害関数の較正などに使われる。国連IPCCの評価報告書でも参照され、各国の長期脱炭素戦略に科学的根拠を提供。複雑系である人間社会と気候系の双方向フィードバックを可視化する重要なツールである。
炭素税
二酸化炭素排出量 1 トン当たりに課す価格シグナルで、排出者に社会的費用を内部化させる。ピグー税の応用例であり、炭素価格が高いほど排出削減インセンティブが強くなる。ノードハウスのモデルでは「最適炭素税」が福利厚生を最大化する水準として計算される。実際には英国やカナダなどで導入され、化石燃料消費を抑制する効果が確認されている。税収を低所得層還付や研究投資に回すことで二重配当効果も期待される。
社会的炭素コスト
追加で 1 トンの CO₂ を排出したときに将来世代まで含めた社会全体が被る損害の現在価値。DICE/RICE などの IAM により推計され、米国政府でも規制評価の基準として採用。割引率や損害関数の形状によって数値が大きく変動し、温暖化リスクの認識や政策強度を左右する。ノードハウスは初期推計で 1 トン当たり数十ドルと提示し、学術・政策の議論をリードした。最新研究では確率的災害や極端事象を組み込むことで上方修正される傾向がある。
DICEモデル
Dynamic Integrated Climate-Economy (DICE) は世界を単一地域として扱い、温室効果ガスの排出・濃度・気温・経済成長を連立方程式で結ぶ。1990 年代にノードハウスが提案し、計算が容易で政策分析に広く利用されている。最適制御問題としてソフトウェア化され、シナリオ比較が数分で可能。単純化の代償として地域差や部門間の不均質性は表現しにくいが、概念実証のベンチマークとして定着。改良版では不確実性や複数ガス、気候閾値を導入し、より現実的な結果を得ている。
排出量取引制度
国や地域が総排出枠を設定し、その範囲内で企業が排出権を売買する仕組み。市場メカニズムにより二酸化炭素の価格が決まり、排出削減コストが低い主体から高い主体へと調整が進む。ノードハウスの分析では、排出枠が適切に設定されれば炭素税と同じ効率性を達成できる。EU ETS やカリフォルニア制度が代表例で、近年は国際リンクの議論も活発。割当方式や価格変動リスク管理が制度設計の鍵となる。