2018年ノーベル経済学賞(2)
受賞理由
技術革新を長期的マクロ経済分析に統合した功績
受賞者
アメリカ合衆国
解説
新しいアイデアや発明が増えると、私たちの暮らしは便利になり、国も豊かになります。ローマーさんは、この『アイデア』がどうやって生まれ、広がるかを数字で説明する方法を考えました。アイデアは使っても減らない『特別な宝物』だと説明し、発明した人にごほうびがあるともっと生まれると示しました。この研究は、学校での勉強や研究への投資が未来の成長につながることを教えてくれます。
関連キーワード
内生的成長理論
経済成長率を技術進歩や人的資本の蓄積など経済内部のメカニズムによって決定するとする理論体系。ローマーの貢献により、アイデア創出部門を明示的にモデル化し、長期的に収穫逓増が持続し得ることが示された。政府の研究補助や教育政策が恒常的な成長率に影響し得るため、政策含意が大きい。ソロー残差を『黒箱』から取り出し、計量モデルと接続可能にした点で画期的。以後、半導体価格など実証研究とも密接に連携が進んでいる。
アイデアの非競合性
同じ設計図や数式は複数人が同時に利用しても減らないという性質を指す。ローマーは、この非競合性こそが規模に応じた成長を可能にする源泉と位置づけた。物的資本と異なり限界費用がゼロに近いため、市場での価格付けには排他権が必要になる。特許制度や著作権がその役割を果たすが、強すぎる独占は再利用を阻害するためバランスが重要。最近ではオープンソースやデータ共有の経済効果を検討する研究も進む。
技術スピルオーバー
企業や研究機関が得た知識が他の主体へ無償または低コストで拡散し、生産性を高める現象。ローマー型モデルではスピルオーバーがアイデア生産の総合的な外部効果となり、民間投資水準が社会最適より低くなる原因になる。クラスター政策や大学産学連携はポジティブなスピルオーバーを促す手段として設計される。国境を越えたスピルオーバーは途上国のキャッチアップを説明する理論的鍵でもある。近年はデータ・プラットフォームを通じたスピルオーバーの計量分析が活発。
知的財産権
発明者や創作者に一定期間の排他的利用権を与える制度。ローマーの理論では、固定費型 R&D を回収するためのマークアップを許容し、アイデア創出インセンティブを生む。保護期間が長すぎると再利用・模倣のコストが増し、社会厚生を損なう可能性もある。現在はバイオ特許やソフトウェア特許の適用範囲をめぐり最適設計が議論されている。トリップス協定など国際ルールも世界的成長に影響を与える重要要素。
マークアップ価格設定
企業が限界費用より高い価格を設定し、固定費や研究費を回収する行動。内生的成長モデルでは、特許により参入が制限された中間財企業がマークアップを獲得し、それが R&D の資金源となる。マークアップが高すぎると生産コストが上昇し、最終財の消費が減少するため、社会最適とのギャップが生じる。競争政策やライセンス契約はこのギャップを縮小する手段として用いられる。近年はプラットフォーム企業の高マークアップが成長率と格差に与える影響も研究対象となっている。