1922年ノーベル化学賞

受賞理由

非放射性元素における同位体の発見と質量スペクトログラフ(質量分析器)の開発、および整数質量数則の提示

受賞者

フランシス・アストン
フランシス・アストン

イギリスイギリス

解説

わたしたちが知っている元素の原子は決まった重さを持っています。ところが同じ元素でも、ほんの少しだけ重さが違う“兄弟”がいることがあります。これを同位体といいます。アストンさんは原子の重さを量るための特別な装置「質量スペクトログラフ」を考え出し、多くの元素に同位体があることを発見しました。このおかげで教科書に載っている原子の重さがより正確になりました。今日、同位体の考え方は腕時計の電池、病気の検査、地球の年齢調べなどにも役立っています。

関連キーワード

同位体

同じ元素でありながら中性子数が異なる原子種。化学的性質はほぼ同一だが質量が違うため、質量分析で分離可能である。アストンは多くの安定元素に複数の同位体が存在することを実証し、原子量の再評価につなげた。今日では放射性同位体年代測定や安定同位体比を用いた気候復元など、多岐にわたる科学技術で利用されている。

質量スペクトログラフ

アストンが開発した初期の質量分析計で、電場と磁場でイオンを分離し、写真乾板に軌跡を記録する。複数の同位体を同時に観測できる点が特徴で、質量精度は後続のダブルフォーカス型の礎となった。現代の質量分析装置の原理的祖先といえる。

整数質量数則

アストンが提唱した経験則で、各同位体の質量は水素質量を単位としたほぼ整数になるというもの。後に核の結合エネルギーによる質量欠損が発見されて完全な整数ではないことが判明したが、この則は核物理学の発展に重要な手がかりを与えた。

質量分光法

イオンを質量対電荷比で分離・検出する分析技術。原子・分子の質量、構造、同位体比を高感度・高精度に測定できる。アストンの研究がこの分野の幕開けとなり、現在は化学、バイオ、地球科学など幅広い領域で不可欠の手法である。

質量欠損

原子核の実測質量が構成する陽子と中性子の質量の総和よりもわずかに小さくなる現象。欠損分は核結合エネルギーに対応し、E=mc²でエネルギー換算できる。整数質量数則からのずれを説明する概念として重要である。

相対原子質量

ある元素中に存在する複数の同位体の質量と存在比の加重平均で定義される値。アストンは同位体構成比を測定することで、多くの元素の国際原子量表を大幅に改訂した。正確な相対原子質量は化学計算や産業製造の基礎データとなっている。