1948年ノーベル化学賞

受賞理由

電気泳動装置の考案および血清タンパクの複合性に関する研究

受賞者

ウィルヘルム・ティセリウス
ウィルヘルム・ティセリウス

スウェーデンスウェーデン

解説

私たちの体には血液が流れていて、その中にはたんぱく質という大切な成分がたくさんあります。ティセリウス博士は、電気を使ってこれらのたんぱく質を性質ごとに分ける新しい実験道具を作りました。これは、磁石で鉄と砂を分けるように、電気の力でたんぱく質を並べ替えるイメージです。分けてみると、見た目が同じ血清でも、実は色々な種類のたんぱく質が混ざっていることが分かりました。この発見は病気の原因や体の仕組みを調べる手がかりになりました。今病院で行われる血液検査の多くは、この研究のおかげで正確に結果を出せるようになっています。だから私たちの健康を守る大切な土台を作った人なのです。

関連キーワード

電気泳動

電場中で帯電粒子が移動する現象を利用した分離分析法。粒子の移動速度は電荷量、サイズ、形状、媒質粘度、電場強度などに依存する。ティセリウスは移動境界法で連続観測を可能にし、生体系ではじめて高精度の定量ができることを示した。この技術はゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動に発展し、DNA解析やタンパク質精製の標準手法となった。臨床検査では、異常バンドの有無が多発性骨髄腫などの診断指標となる。

血清タンパク

血液から赤血球や血漿凝固因子を除いた液体成分に含まれるタンパク質群。アルブミンは浸透圧を維持し、グロブリンは免疫反応や鉄輸送など多様な機能を担う。ティセリウスの研究により、これらが電荷と分子量で細分化できることが示された。現在は電気泳動パターンの変化で肝機能障害、腎症候群、免疫不全などをスクリーニングできる。さらに質量分析やプロテオミクスへと解析手法が拡張され、バイオマーカー探索の主要対象となっている。

吸着分析

固体表面に分子が選択的に吸着する性質を利用して成分を分離・定量する手法。ティセリウスは電気泳動後にタンパク質を支持体へ吸着させ、段階溶離で画分を回収するプロトコルを開発した。これはイオン交換クロマトグラフィーやアフィニティー精製の概念的前駆体となる。吸着等温線の解析により結合定数が求まり、分子間相互作用の研究にも応用できる。現在のバイオ医薬品製造では、同原理が多段階精製工程で不可欠となっている。

移動度

電気泳動で帯電粒子が単位電場あたりに進む速度を示す指標。電荷が大きいほど、また分子が小さいほど一般に高い値を示す。ティセリウスは移動度分布を連続的に記録し、タンパク質の異質性を数理的に評価した。移動度は電気浸透流や温度勾配の影響を受けるため、測定には緩衝液条件の統一が重要となる。現在のキャピラリー電気泳動ではモビリティデータを用いて等電点や分子量推定も行われている。

分離技術

混合物から目的成分を取り出すための科学的手法全般を指す。電気泳動は電場利用、クロマトグラフィーは流体と固定相の相互作用利用、遠心分離は遠心力利用といった具合に、多様な原理が存在する。ティセリウスの成果で生体高分子に対する高分解能分離が可能になり、生命科学研究が飛躍的に進んだ。現在はマルチオミクス解析や創薬で、複数手法を組み合わせたハイブリッド分離が主流となっている。分離能とスループットの両立が次世代技術開発の鍵である。

等電点

分子が正味電荷ゼロになるpHを示す。たんぱく質はアミノ酸側鎖に酸性・塩基性基を持ち、このpHでは電気泳動で移動しない。ティセリウスのデータは、等電点が異なるたんぱく質の帯が電場で別々に現れることを示し、後の等電点電気泳動技術に発展した。等電点はタンパク質の溶解性や結晶化条件を決める重要パラメータであり、製剤設計でも重視される。現在の2D電気泳動では、等電点と分子量の二軸でタンパク質を高精細に分離できる。

クロマトグラフィー

固定相と移動相の分配平衡を利用して混合物を分離する技術。吸着分析の発展形としてイオン交換・ゲルろ過・逆相など多彩なモードが派生した。ティセリウスの考案した吸着手順はイオン交換クロマトグラフィーの理論的基盤を提供し、高純度タンパク質の大量製造を可能にした。クロマトグラフィーは医薬品、食品検査、環境分析など広範な分野で不可欠な手段である。最近ではマイクロ流体プラットフォームや連続生産方式との統合が進み、効率と持続可能性が向上している。