1950年ノーベル化学賞
受賞理由
ディールス・アルダー反応の発見とその応用
受賞者
西ドイツ
西ドイツ
解説
化学者ディールスとアルダーは、二つの小さな分子を合わせて新しい六角形の輪を作る方法を見つけました。これはディールス・アルダー反応と呼ばれ、ちょうど紙を折って輪っかを作るように、分子同士をやさしくくっつけます。ゴムの原料やビタミンなどの材料を、この反応で簡単につくることができます。高い温度で混ぜるだけで進むので、強い薬品や光を使わなくてもいいのが特徴です。この発見によって、私たちの身近にあるプラスチックや薬の作り方がより安全でかんたんになりました。
関連キーワード
ディールス・アルダー反応
ディールス・アルダー反応は、共役ジエンとジエノフィルの[4+2]付加によってシクロヘキセン骨格を一挙に構築する方法である。1928年に報告され、ウォッドワード・ホフマン則で説明される熱許容ペリ環状反応の代表例となった。副生成物がほとんど無く、原子効率が高いため、グリーンケミストリーの教科書でも取り上げられる。医薬品、農薬、機能性材料など幅広い合成工程で中間体構築の鍵となる。逆反応(レトロDA)は分子の切断にも利用され、分析化学や可逆性材料でも重要である。
ジエン
ジエンは二重結合を二つ持つ炭化水素で、共役ジエンでは二重結合が単結合を挟んで並んでいる。共役ジエンはπ電子が連続して広がり、HOMOエネルギーが高くなるため求核性が増大する。ディールス・アルダー反応ではこの高いHOMOがジエノフィルのLUMOと重なりやすく、反応が速く進む。天然ゴムの主成分イソプレンや合成ゴムのブタジエンは代表的なジエンである。フッ素や窒素で置換されたジエンを用いると、反応生成物に特異な物性が付与される。
ジエノフィル
ジエノフィルは「ジエン好き」という語源通り、ジエンと反応して輪を作る分子で、一般に電子欠乏二重結合を持つ。マレイン酸無水物やアクリロニトリルのように電子求引基を持つ炭素-炭素二重結合が典型例である。電子求引基はLUMOを低下させ、ジエンのHOMOとのエネルギー差を縮めることで反応速度を高める。ルイス酸を添加するとさらにLUMOが下がり、穏やかな条件で反応させることができる。ヘテロ原子を含むジエノフィルを用いれば、オキサDAやアザDAなどヘテロ環を合成することも可能である。
シクロ付加反応
シクロ付加反応は二つ以上の分子(または同一分子の部分)が結合しながら環状構造を生成する反応群である。[4+2]、[3+2]、[2+2]など足されるπ電子数で分類され、有機合成の骨格構築に広く使われる。ディールス・アルダー反応は[4+2]シクロ付加の代表例で、他には1,3-双極子とアルケンが反応するヒュイスゲン[3+2]付加などがある。シクロ付加は多くの場合協奏機構で進行し、立体化学がよく保存されるため、複雑分子の立体選択的合成に向く。光化学的[2+2]付加のように電子状態に応じて選択性が変わる点も応用範囲を広げている。
ペリ環状反応
ペリ環状反応は複数の結合が同時かつ協奏的に切れたり結ばれたりする反応で、遷移状態は閉じた輪のような電子の流れを示す。軌道対称性の保存を指針とするウォッドワード・ホフマン則によって熱許容性や可逆性が明確に予測できる。電荷やラジカルの中間体を経由しないため、副反応が少なく、原子効率が高い。有名な例としてディールス・アルダー反応、コープ転位、エレクトロシクリック反応が挙げられる。分子の三次元構造を一挙に変換できるため、天然物合成や材料化学で重宝される。