1953年ノーベル化学賞

受賞理由

鎖状高分子化合物の研究

受賞者

ヘルマン・シュタウディンガー
ヘルマン・シュタウディンガー

西ドイツ西ドイツ

解説

プラスチックやゴムなどは、とても長いひもがからまったような分子でできています。シュタウディンガーさんは、その長いひもを「高分子」と名づけ、本当に一本の鎖のようにつながっていることを証明しました。当時は小さな分子がたくさん集まっているだけだと思われていたので、この発見は大ニュースでした。高分子という考え方が広まったおかげで、軽くて丈夫なおもちゃや文房具、自動車のバンパーなどが作られるようになりました。私たちの毎日の生活が便利になったのは、この研究のおかげと言ってもいいでしょう。

関連キーワード

高分子

高分子とは、モノマーと呼ばれる小さな分子が数百から数百万個も鎖状につながった巨大分子です。天然にはセルロースやDNA、タンパク質があり、合成例としてはポリエチレンやナイロンがあります。分子が長くなるほど物質は粘り気をもち、溶解や融点などの性質が大きく変わります。シュタウディンガーは、高分子が共有結合で連なった一本鎖であるというモデルを初めて提案しました。この概念が現代材料科学を支え、プラスチック、繊維、エラストマーなど多様な製品開発へとつながっています。

重合

重合はモノマーが化学反応でつながり、高分子を生成する過程です。付加重合では二重結合が開いて鎖が伸び、縮合重合では小分子(例えば水)が副生成物として除かれながら結合が進みます。反応速度や連鎖停止の制御によって分子量や分子量分布を設計できます。シュタウディンガーはスチレンやイソプレンの重合実験で鎖成長機構を明らかにしました。今日ではラジカル、イオン、開環、リビング重合など多様な重合手法が確立されています。

分子量

分子量は一つの分子を構成する原子の相対質量の和であり、高分子では数千から数百万と非常に大きくなります。数値の定義には数平均(Mn)と重平均(Mw)があり、分子量分布を示す指数(Ð)も重要です。浸透圧測定やゲル浸透クロマトグラフィーによって高分子の分子量を評価できます。シュタウディンガーは高分子が巨大な分子量をもつことで単分散のコロイド説を否定しました。分子量は材料の強度、溶融粘度、生分解性などを左右する設計パラメータです。

ナイロン

ナイロンは1930年代に開発された合成繊維で、ジアミンとジカルボン酸の縮合重合により作られます。高い強度と耐摩耗性をもつため、ストッキングからパラシュート、ギター弦にまで利用されています。水素結合が結晶部を形成し、機械的性質を向上させるのが特徴です。ナイロンの誕生は高分子鎖が物性を決定するというシュタウディンガーの理論を実証しました。近年はリサイクルナイロンやバイオ由来ナイロンの研究も盛んです。

天然ゴム

天然ゴムはヘベア樹液から採れるポリイソプレンで、古くから弾力性素材として利用されてきました。シュタウディンガーは天然ゴムが数十万の分子量をもつ長鎖であると示し、架橋による弾性回復の仕組みを説明しました。加硫(硫黄架橋)により熱安定性と強度が大きく向上します。タイヤ、手袋、ホースなど幅広い製品に不可欠です。現在はアレルギー対策や持続可能な採取方法も重要な研究テーマとなっています。

ポリエチレン

ポリエチレンは世界で最も生産量が多いプラスチックで、エチレンの付加重合により得られます。高密度(HDPE)と低密度(LDPE)では分岐の程度が異なり、機械的性質や透明性が変化します。シュタウディンガーの長鎖モデルがなければ、こうした構造—物性相関の理解は進まなかったでしょう。軽量で耐薬品性が高く、包装材からパイプ、医療用品まで幅広く使用されています。マイクロプラスチック問題を受け、分解性やリサイクル技術の開発が急務となっています。