1959年ノーベル化学賞

受賞理由

ポーラログラフィーの理論および発見

受賞者

ヤロスラフ・ヘイロフスキー
ヤロスラフ・ヘイロフスキー

チェコスロバキアチェコスロバキア

解説

水に電気を流すとき、電気の強さがどのように変わるかを見ると、中に何が溶けているかがわかります。ヘイロフスキーさんは、水銀の小さな滴(しずく)をポタポタ落としながら電圧を少しずつ変え、流れる電気を測りました。そのグラフの形から、水の中に入っている金属や薬の量をすぐに知ることができる方法を考え出しました。このやり方をポーラログラフィーといいます。たとえばジュースに砂糖がどれだけ入っているかを一瞬で測る“魔法のものさし”のようなものです。この技術のおかげで、お薬づくりや川のきれいさ調べが早く正確にできるようになりました。

関連キーワード

ポーラログラフィー

電圧を連続走査して流れる電流を記録し、物質の種類と濃度を求める電気化学分析法。滴下水銀電極の更新性と広い電位窓を利用するため、微量金属や有機化合物の同定に適している。得られる曲線はS字型で、半波電位と拡散電流が重要な指標となる。現在のパルスボルタンメトリーの原点として位置付けられる。

滴下水銀電極

毛細管から数秒ごとに自然落下する水銀の滴が電極として機能する装置。新しい表面が絶えず形成されるため、吸着や汚染による誤差が小さい。水素過電圧が大きく、水素ガス発生を抑えることで広い陰極電位域が利用可能。微量成分の還元波を高感度で測定できる点が特徴。

半波電位

ポーラログラムで拡散電流のちょうど半分の電流が流れるときの電位。ネルンスト式に従い、イオン種特有の値となるため、定性分析の指標となる。配位子が存在するとシフト量から安定度定数が求められ、錯体化学の研究にも応用される。

イルコヴィッチ方程式

拡散電流 i_d と濃度 C、拡散係数 D、滴の質量 m、滴下時間 t の関係を示す式 i_d = 607 n D^{1/2} m^{2/3} t^{1/6} C。ポーラログラフィーの定量精度を理論的に保証し、溶出時間や温度依存性の補正指針にもなる。式の導出は拡散方程式の解と実験統計を結びつけた先駆的業績である。

電気化学分析

電圧や電流の変化を利用して試料中の化学種を測定する化学の一分野。ポーラログラフィー、クーロメトリー、ポテンシオメトリーなどが含まれ、迅速かつ高感度であることが特徴。環境、医薬、材料など幅広い分野で利用される。

微量金属分析

ppb〜ppmレベルの金属濃度を測定する分析技術。ポーラログラフィーは濃縮工程なしでも直接測定できる場合が多く、環境水中のカドミウムや鉛の監視に用いられる。近年は溶出ボルタンメトリーと組み合わせて更なる感度向上が図られている。

拡散電流

電極表面に向かう濃度勾配によって供給されるイオンが作る電流。電極反応を速くするために電界を強くしても一定値に達すると飽和し、それ以上は拡散が律速となる。ポーラログラフィーではこの電流の平坦部分(プラトー)が定量の目安となる。