1966年ノーベル化学賞
受賞理由
分子軌道法による化学結合および分子の電子構造に関する研究
受賞者
アメリカ合衆国
解説
ロバート・マリケンさんは、分子の中で電子がどこにいるかを調べる特別な方法を考えました。電子はとても小さくて見えませんが、雲のように広がって分子をつくっています。マリケンさんの方法は、電子が雲のどこに集まっているかを計算で予想するものです。これにより、物質がくっついたり離れたりする仕組みがわかるようになりました。私たちが使う薬やプラスチックも、この考え方で安全につくられています。
関連キーワード
分子軌道法
原子軌道の線形結合で分子軌道を構築し、シュレーディンガー方程式の近似解を求める手法。結合次数、結合エネルギー、電荷分布などを計算できるため、有機化学から材料科学まで広く利用される。マリケンの業績により、実際の分子に適用するための正規化やオーバーラップ行列の扱いが確立した。
マリケン人口解析
分子軌道係数とオーバーラップ積分から各原子の電子数や結合寄与を割り振る解析法。原子電荷や共有度を評価でき、反応性や極性の議論に用いられる。より高精度なNPAやAIM解析の先駆けとして計算化学の基盤を形成した。
HOMO・LUMO
最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)はフロンティア軌道と呼ばれ、反応開始点や電子移動経路を決定づける。エネルギー差(ギャップ)は分子の安定性や光吸収特性、半導体挙動に影響を与えるため、材料設計の重要指標となる。
オーバーラップ積分
異なる原子軌道間の波動関数重なりを数値化した指標。値が大きいほど電子密度が共有され、強い結合が形成されやすい。分子軌道法ではハミルトニアン行列と共に固有値計算に組み込まれる。
量子化学
量子力学を用いて原子・分子の構造と性質を理論的に研究する学問分野。マリケンの研究は量子化学の体系化を促し、計算化学ソフトウェアの発展を後押しした。現在では薬設計、エネルギー材料、高分子研究などに不可欠である。
線形結合原子軌道 (LCAO)
分子軌道を複数の原子軌道の重ね合わせとして表現する近似。数学的に扱いやすく、縮小された基底集合で多電子系を記述できる。ほぼすべての分子軌道計算の出発点として採用される。
フロンティア軌道理論
福井謙一が発展させた理論で、反応性をHOMOとLUMOに着目して説明する。マリケンの分子軌道概念が基盤となっており、有機反応の位置選択性や速度論解析に広く使われる。