1971年ノーベル化学賞

受賞理由

遊離基の電子構造と幾何学的構造の研究

受賞者

ゲルハルト・ヘルツベルク
ゲルハルト・ヘルツベルク

カナダカナダ, 西ドイツ西ドイツ

解説

分子は原子がつながってできた小さな「お家」のようなものです。ヘルツベルクさんは、分子がどんな形をしているか、そして中を回る電子がどの場所にいるかを光を使って調べました。とくに「遊離基」という、とても反応しやすい分子の一部だけが孤立している特別な仲間を詳しく観察しました。これは、暗闇で懐中電灯を当てて隠れている虫を見つけるような実験です。この研究によって、薬やプラスチックをつくるときに分子を思い通りに組み立てるヒントが得られました。

関連キーワード

遊離基

遊離基は不対電子を持つため非常に反応性が高く、化学反応の起点や中間体として重要です。ヘルツベルクは分光法を使い、短命なこれら種の電子配置と振動状態を直接測定する手法を確立しました。得られた分子定数は燃焼プロセスや生体内酸化反応のモデル化に不可欠であり、大気汚染メカニズムの解明にも貢献しています。

電子構造

電子構造とは分子内で電子が占める軌道やエネルギー準位の配置を指します。ヘルツベルクの高分解能スペクトル解析は、実験的電子構造決定の信頼性を飛躍的に高めました。これにより、理論化学計算の検証や新しい触媒設計の指針が得られました。

分子分光法

分子分光法は光の吸収・放出を調べて分子の構造や運動を解析する技術群です。ヘルツベルクは紫外、可視、赤外、マイクロ波領域を横断的に利用し、分子の振動・回転・電子遷移を総合的に評価しました。現在のレーザー分光やテラヘルツ分光の発展にも大きな影響を与えています。

吸収スペクトル

吸収スペクトルは物質が特定の波長の光を吸収する度合いを示すグラフで、分子エネルギー準位の指紋と言えます。ヘルツベルクは分解能向上のためにエシェル分光器や干渉計を改良し、微細構造まで観測することに成功しました。得られたスペクトルデータは国際データベースに登録され、多分野の研究者が参照しています。

星間分子

星間分子は宇宙のガス雲や星形成領域に存在する分子で、化学進化や生命起源の手がかりになります。ヘルツベルクの実験測定値は天体分光で得られる未知線の同定に利用され、H2O+ や CH+ など初期の星間分子発見を後押ししました。現在もアルマ望遠鏡などの観測解析で引用されています。

電子スピン共鳴

電子スピン共鳴(ESR)は不対電子を持つ物質の磁気的性質を測定する手法で、遊離基研究に不可欠です。ヘルツベルクの光学分光データはESR解析の基準値としても用いられ、相補的に分子のスピン状態と g 値の決定を可能にしました。

分子幾何構造

分子幾何構造は原子間の距離や角度で定義され、反応性や物性を左右します。高精度スペクトルから導かれた回転定数を使うと、ピコメートル精度で幾何構造を推定できます。ヘルツベルクの業績は、X線結晶構造解析が困難なガス状分子や不安定種の幾何決定に革命をもたらしました。