1972年ノーベル化学賞(2)

受賞理由

リボヌクレアーゼ分子の活性中心の構造に関する研究

受賞者

スタンフォード・ムーア

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

ウィリアム・スタイン

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

タンパク質はハサミのように働く部分があり、それを“活性中心”と呼びます。ムーア博士とスタイン博士は、リボヌクレアーゼのどこがこのハサミの刃に当たるのかを詳しく調べました。ハサミの刃の形が分かると、どうやってRNAを切るのかが理解できます。これは機械の部品図を描いて仕組みを解き明かすことに似ています。

関連キーワード

活性中心

酵素反応が実際に進行する部位で、基質結合と触媒機能を担う。残基の配置が数オングストローム単位で最適化されており、化学修飾や変異導入による感受性が高い。活性中心の理解は創薬ターゲット設定に不可欠である。

ヒスチジン触媒

イミダゾール環を持つヒスチジンはpH付近でプロトンを受け渡しできるため、酸塩基触媒として頻出する。RNase AのHis12とHis119はその代表例で、反応座標に沿った質子移動に関与する。

化学修飾解析

特定残基を選択的に反応させて活性変化を追う手法。失活の有無から残基機能を推定でき、構造情報が限られた時代に有力なアプローチだった。ムーアとスタインはジアゾ化やホスホロジル化を駆使した。

X線結晶構造解析

結晶にX線を当てて散乱パターンから原子の位置を決定する方法。RNase Aは初期に高分解能構造が得られた酵素で、活性中心研究の決定打となった。今日も創薬や酵素工学の主力技術である。

酵素速度論

反応速度を測定し、基質濃度やpH、阻害剤存在下での挙動から機構を推定する学問。ムーア・スタインのpH-プロファイル解析は二重ヒスチジン機構の証拠となった。現在は迅速キネティクスやシングルモレキュール測定へ発展している。

ペプチドマッピング

酵素や化学的に分解したペプチド断片をパターン比較し、配列や修飾位置を推定する方法。RNase Aで活性消失ペプチドを特定するのに使われた。現在は高速LC-MSに置き換わっているが原理は同じ。

酸塩基触媒

酸または塩基として働く残基が基質の反応性を高める機構。RNase Aでは2つのヒスチジンが協調してリン酸ジエステル加水分解を促進する。多くの加水分解酵素で見られる普遍的戦略である。

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