1972年ノーベル化学賞(1)

受賞理由

リボヌクレアーゼ分子のアミノ酸配列の決定

受賞者

クリスチャン・アンフィンセン
クリスチャン・アンフィンセン

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

私たちの体の中にはタンパク質という小さな部品のようなものがたくさんあります。そのタンパク質は、アミノ酸というビーズがひもに並んだネックレスのように順番にくっついてできています。アンフィンセン博士は、このビーズがどんな順番で並んでいるかを調べた大実験を行いました。順番が分かると、そのタンパク質がどんな形になって働くのかを予想できるようになります。これは、レゴの組み立て説明書を手に入れたようなすごい発見でした。

関連キーワード

リボヌクレアーゼ

RNAを切断する酵素の総称。特にRNase Aは膵臓由来の124残基タンパク質で、アンフィンセンらの研究対象となった。触媒機構が比較的単純で安定性が高く、フォールディング研究の古典的モデルとして知られる。現在も酵素化学や構造生物学の教材として頻繁に利用される。

アミノ酸配列

タンパク質の一次構造に相当し、20種類のアミノ酸がN末端からC末端まで並ぶ順序を示す。配列が変わると折りたたみ方や機能が大きく変化するため、生物学的情報の“コード”とも呼ばれる。現在は自動シーケンサーや質量分析で高速解析できるが、1970年代は化学分解とクロマトグラフィーが主流だった。

タンパク質フォールディング

一次配列が秒〜分の時間スケールで自己組織化して三次元構造を形成する過程。誤ったフォールディングはアルツハイマー病などの原因にもなる。アンフィンセンの実験はフォールディングが可逆であり、熱力学的に決定されることを示した。

エドマン分解

ポリペプチドのN末端から一残基ずつ切り出して同定する化学的方法。配列決定の黄金標準として長年利用されたが、長鎖では手間がかかる。現在は質量分析に置き換えられつつある。

ジスルフィド結合

システイン残基間で形成される-S-S-結合で、タンパク質の安定化に寄与する。RNase Aには3本のジスルフィドがあり、正しい組合せが活性維持に必須である。アンフィンセンは酸化還元操作でその再形成を制御した。

熱力学的仮説

タンパク質の最終構造は自由エネルギーが最も低い状態であり、一次配列がそれを一意に決定するという考え。フォールディング経路に依存しない点が重要で、計算生物学でのエネルギー最適化手法の理論的支柱となっている。

クロマトグラフィー

混合物を吸着剤との相互作用差で分離する分析手法。ペプチド断片の精製やジスルフィド異性体の分離に用いられた。今日でもプロテオミクスで不可欠な技術である。

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