1975年ノーベル化学賞(2)

受賞理由

有機分子および有機反応の立体化学的研究

受賞者

ウラジミール・プレローグ
ウラジミール・プレローグ

スイススイス

解説

鏡に映した右手と左手は重ねてもぴったり合いません。分子も同じで、左右の形があるものがあります。プレローグ博士は、どちらの形を持つ分子なのかを見分ける“分子の名札”を作りました。この名札のおかげで、薬などを作るときに間違った形を避けやすくなりました。結果として、より安全で効果的な製品を作れるようになったのです。

関連キーワード

CIP規則

Cahn–Ingold–Prelog規則は不斉炭素や二重結合の立体配置をR/S・E/Zで表す国際標準です。置換基の原子番号を比較し、優先順位を決めて配置を判定します。立体配置を記述するための曖昧さを排除し、論文や特許での誤解を大幅に減らしました。化学ソフトウェアやデータベースでも自動判定アルゴリズムに組み込まれています。プレローグはこの規則の共同提案者として中心的役割を果たしました。

絶対配置

分子中の不斉中心が空間でどの方向に並んでいるかを絶対的に示す概念です。R体とS体は互いに鏡像体で薬理作用が異なる場合が多いです。X線結晶解析や円二色性分光で実験的に決定されますが、CIP規則で紙の上でも導けます。正確な絶対配置の指定は、品質管理や特許保護で不可欠です。プレローグの体系化がこの分野を整備しました。

立体異性体

同じ分子式・結合順序を持つが、原子の空間配置が異なる化合物の総称です。エナンチオマーとジアステレオマーが含まれます。立体異性体間では融点・旋光度・生物活性が大きく異なることがあります。立体選択的合成はこれらの性質を制御する手段です。プレローグの理論は立体異性体の分類と命名を体系的に整理しました。

不斉合成

反応系にキラル要素を導入し、片方のエナンチオマーやジアステレオマーを優先的に作る手法の総称です。光学活性触媒・キラル補助基・酵素がよく用いられます。医薬品や香料の工業生産で重要な技術です。プレローグの“プロキラル面”概念は反応設計の共通言語となりました。不斉合成はグリーンケミストリーの鍵技術としても注目されています。

配座解析

分子が取り得る回転異性 (配座) とそのエネルギー差を調べる研究分野です。立体反発や立体電子効果が反応性に影響します。プレローグはノルボルナンやシクロヘキサン誘導体で配座と反応速度の相関を示しました。配座解析は分子認識や材料設計でも重要です。今日では量子化学計算と相補的に用いられています。

不斉中心

4つの異なる置換基を持つsp3炭素など、鏡像体を生じさせる原子位置を指します。ここが右手型(R)か左手型(S)かで分子全体の性質が変わります。プレローグの方法で優先順位を付けると、紙面上で簡単にR/Sを決定できます。不斉中心を持つ分子は生体内で選択的に認識されるため、新薬設計で特に重要です。多不斉中心系では相互作用による立体効果が複雑化します。

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