1977年ノーベル化学賞
受賞理由
非平衡熱力学、特に散逸構造の理論への貢献
受賞者
ベルギー
解説
熱いお湯と冷たい水を混ぜると温度がだんだん同じになります。でもときどき、化学反応では混ぜてもしましま模様ができたり、色が周期的に変わったりします。プリゴジンさんは、この不思議な現象がエネルギーを外に出し入れする“開いた系”で起こることを説明しました。これにより、自然が自分で形やリズムを作り出すしくみが分かるようになりました。
関連キーワード
非平衡熱力学
平衡から離れた系でエネルギーや物質が流れるときの熱力学的法則を扱う分野。温度勾配や化学ポテンシャル差によって駆動される不可逆過程を記述し、エントロピー生成や輸送係数の評価を行う。プリゴジンはこの理論を線形領域の外へ拡張し、自己組織化を説明できる枠組みに高めた。
散逸構造
外界とエネルギーや物質を交換する開放系で、散逸を伴いながら形成される空間・時間的に秩序だった構造。例として化学振動、ベナール対流、レーザーのモード同期などが挙げられる。プリゴジンはこれを自然界の秩序生成の普遍的原理として提唱した。
エントロピー生成
不可逆過程によって増加するエントロピー量で、非平衡状態の駆動“コスト”を表す。線形近似では最小化原理が成り立つが、遠く離れた非線形領域では安定構造がむしろ高い生成率に対応することがある。散逸構造の安定条件を議論する鍵概念となる。
ベロウソフ・ジャボチンスキー反応
酸化還元反応を含む自触媒系で、溶液の色が周期的に変化する典型的な化学振動反応。散逸構造の実験モデルとして広く研究され、数学モデル Oregonator の検証にも用いられる。パターン形成や化学カオス研究の出発点となった。
ブリュッセルター
プリゴジンらが提案した二成分または三成分の単純な反応拡散モデル。パラメータ領域によって定常解、極限周期、空間パターンが現れ、ホップ分岐やチューリング分岐の教科書的例として扱われる。複雑系理論で“最小構成要素”を示す代表例。
自己組織化
多数の要素が外部からの細かな指令なしに相互作用し、全体として秩序だった構造や機能を生み出す現象。散逸構造理論はエネルギー散逸がこの現象を駆動する仕組みを示した。生物進化、都市交通、インターネットトポロジーなど多彩な分野で重要な概念となっている。
不可逆過程
一度進むと自然には元に戻らない熱力学過程。摩擦や拡散、化学反応が典型で、エントロピーを増大させる。プリゴジンは不可逆性を系のマクロ秩序を生む創発的資源とみなし、熱力学第二法則を“散逸を通じた秩序の創出”という積極的原理に読み替えた。