1983年ノーベル化学賞
受賞理由
金属錯体の電子遷移反応機構の解明
受賞者
ヘンリー・タウベ
アメリカ合衆国
解説
私たちの体や電池では、電子というとても小さな粒が行ったり来たりしてエネルギーを運んでいます。タウベ博士は、金属を中心にした分子(これを金属錯体といいます)で電子がどこからどこへ、どんな道を通って動くのかを調べました。それは友だちにボールを直接手渡しで渡すのか、ひもを通して送るのかを見分けるような実験です。彼の研究のおかげで、電池や光合成などの仕組みをもっとよく理解できるようになり、新しい材料やお薬を作るヒントも生まれました。
関連キーワード
電子移動反応
酸化還元反応において電子が供与体から受容体へ移動する過程。速度論的パラメータと熱力学的駆動力の両方が重要で、エネルギー変換や生命現象に不可欠である。
金属錯体
中心金属イオンが配位子と呼ばれる分子やイオンに取り囲まれた化学種。配位数、配位子場強度、電子配置が反応性を大きく左右する。
外圏電子移動
配位球を保持したまま二つの錯体が電子をやり取りする経路。再編成エネルギーとクーロン相互作用が律速因子となり、マーカス理論で記述される。
内圏電子移動
二つの錯体が橋渡し配位子を共有して一時的な共有結合を形成し、その橋を介して電子が移動する経路。橋渡し配位子の性質が速度に大きく影響する。
配位化学
金属イオンと配位子の結合様式や反応性を研究する化学分野。触媒、医学、材料科学など多方面に応用される。
反応速度論
化学反応がどれくらいの速さで進行するか、またその速さが温度や触媒、構造にどう依存するかを扱う学問領域。電子移動反応の解析に不可欠である。
マーカス理論
外圏電子移動の活性化エネルギーを溶媒および内的再編成エネルギーから定量的に導く理論。反応速度と自由エネルギー変化の関係を放物線で表す。
酸化還元反応
電子の授受に伴って酸化数が変化する化学反応。エネルギー変換、腐食、代謝など多岐にわたる現象の基礎となる。