1998年ノーベル化学賞(2)
受賞理由
量子化学における計算化学的方法の開発
受賞者
イギリス
解説
分子は小さな球がくっついたモデルでよく描かれますが、本当は電子が雲のように広がっています。ジョン・ポープルさんは、その雲の形をコンピューターで素早く描く方法を作りました。これにより薬やプラスチックの分子を作る前から性質を予測できるようになりました。お菓子の型を使って形を確かめるように、科学者はポープルさんの方法で分子の形を試しているのです。
関連キーワード
ガウシアン基底関数
原子軌道をガウス関数の線形結合で近似する表現。積分が解析的に解け高速計算が可能。6-31Gやcc-pVTZなど階層的精度が選べる。分子サイズに応じて計算コストと精度のバランスを取れる利点がある。
ハートリー・フォック法
電子間相互作用を平均場で扱う最も基本的なアブイニシオ手法。多くの後続相関手法(MP2,CI,CCSD)の出発点となる。ポープルのプログラムはHF計算の自動化を実現し、大規模分子にも適用範囲を広げた。
GAUSSIANプログラム
世界で最も利用者の多い量子化学ソフトウェアの一つ。単一の入力形式で多彩な手法を呼び出せるのが特徴。医薬・材料・環境分野で広く活用され、実験設計の初期段階を支援する。
MP2法
2次メラー・プレセット摂動理論。HFの欠落相関エネルギーを手頃な計算量で補正する。分散力や立体反発の評価に適し、ガウシアン基底と組み合わせて反応エネルギーを1–2kcal/mol程度の精度で予測できる。
複合手法 (G2/G3)
ポープルが提案した多段階計算プロトコル。小さな基底で幾何最適化後、段階的に大きな基底と相関補正を加え、経験的補正も含めて高精度エネルギーを得る。熱化学データとの比較で“化学精度”を達成した。
量子化学ソフトウェア
分子の電子構造を計算するプログラム群。GAUSSIAN, GAMESS, ORCA などがあり、入力言語や実装手法が異なる。ポープルの設計思想は多くの後続コードに影響を与えた。
分子軌道
分子内で電子が占める軌道。線形結合原子軌道 (LCAO) で表され、エネルギー順位は化学反応性を左右する。ポープルの方法により大分子のMO可視化が容易になった。