1927年ノーベル文学賞
受賞理由
豊かで活発な発想と、それが表現された鮮やかな技巧に対して
受賞者
フランス
解説
アンリ・ベルクソンは、本を通して「時間」や「いのち」の不思議さを楽しく教えてくれたフランスの哲学者です。彼は時計の針が進むような時間だけでなく、私たちの心が感じる伸び縮みする時間があると考えました。たとえば、休み時間はあっという間なのに、退屈な授業は長く感じることがありますよね。そのような心の時間を大切にしようと伝えたのです。また、ベルクソンは生命には前に進もうとする力があると考え、「エラン・ヴィタール」と名づけました。こうしたユニークな考えを美しい言葉で書いたことが、ノーベル文学賞につながりました。
関連キーワード
エラン・ヴィタール
1. ベルクソンが生命進化を説明するために導入した創造的な内的推進力を示す概念。2. 無生物的な物理・化学法則では把握できない新規性と方向性をもつ運動原理とされた。3. 彼はこれにより機械論と目的論の二分法を乗り越え、生命自体の自発性を強調。4. 後世では vitalism と同一視され批判も受けたが、プロセス哲学や複雑系理論で再評価が進む。5. 生物学史の文脈で読むと、20世紀初頭の生気論復興と新ダイナミズムの象徴的キーワードである。
持続(デュレー)
1. 心的時間の質的連続を示すベルクソンの基礎概念。2. 空間的測定に適した均質時間とは異なり、過去が現在に溶け込みながら流れる。3. この連続体では瞬間を切り分けられず、自由意志が働く余地があるとされた。4. 文学の「意識の流れ」技法や映画理論にも影響を与え、ベルクソン映画論はジル・ドゥルーズに継承された。5. 現代の時間経験研究では、脳内時間と主観的時間の解離を考える上で参照点となっている。
直観
1. ベルクソンにおける認識方法で、対象に“飛び込む”ことで内部から理解する行為。2. 分析的知性が外側から分割・表象するのに対し、直観は連続的現実を分割せず把握する。3. この区別は科学知と哲学知の協働を構想する枠組みとして提示された。4. 現象学の“現象への回帰”や芸術学の没入的アプローチに影響。5. 近年の認知科学では first-person data 重視の議論と接点が論じられている。
創造的進化
1. ベルクソンの1907年の著作であり、生命進化を創造行為として描いた。2. 自然淘汰を否定せずつつも、偶然の集合では説明できない質的飛躍に注目。3. 彼は形態学的分岐を時間軸上の継起ではなく、分流する運動と捉えた。4. 書籍は哲学・生物学・文学の交差点としてベストセラーになり、バージニア・ウルフらに影響。5. 21世紀の evo-devo や自己組織化理論との対話も進み、再読が盛んである。
意識の流れ
1. 心内の思考や感覚の連鎖を途切れなく描写する文学技法。2. ベルクソンの持続概念が理論的裏付けを与え、ジェイムズ・ジョイスやプルースト作品へ影響。3. 作中時間と語り時間の一致・ずれを利用し、主観的体験を臨場感をもって提示する。4. 映画編集の長回しやジャンプカット論にも応用され、時間知覚の操作として分析される。5. 認知文学の分野では、読者の共感と脳活動パターンの関係を調べる手がかりとなっている。
時間と自由意志
1. ベルクソンの初期著作で、物理時間と心理時間の区別を明確化。2. 定量的時間モデルが自由意志の否定を招くと批判し、質的時間における選択の現実性を主張。3. 当時盛んだった決定論と新心理学の潮流に一石を投じた。4. 哲学だけでなく法学・教育学での責任概念再考に影響を与えた。5. 今日の神経決定論争でも、主観的意図の扱いを巡る論証の参照例となっている。