2000年ノーベル文学賞
受賞理由
普遍的な正当性、痛烈な洞察力、独創性をもった作品によって中国の小説や劇作に新たな道を開いたこと
受賞者
フランス,
中華人民共和国
解説
高行健(ガオ・シンジェン)さんはお話を書いたり、お芝居を書いたりする作家です。彼のお話は遠い中国の山や川が舞台ですが、友だちを思いやる気持ちや自由を求める心など、世界中のみんなが感じる気持ちが描かれています。むずかしい政治の時代に自由に書くことができず、ときには旅に出て、自分の考えを探し続けました。その体験が『霊山(Soul Mountain)』という長い物語や、見えないものを想像させる楽しいお芝居に生かされています。読む人や観る人は、まるで冒険に出かけているような気持ちになり、言葉の面白さにも気づきます。だからノーベル賞の人たちは、高行健さんの作品は世界中の人が楽しめると考えて、賞をあげました。
関連キーワード
霊山
高行健の長編小説(1990年執筆、1999年英語訳)で、多声的語りと断片構造を通じて自己探求と自然観照を描く代表作。
不条理演劇
ベケットやイヨネスコに代表される20世紀半ばの演劇潮流。高行健はこれを中国語演劇に移植し、言葉の無力と存在の不確実性を舞台化した。
亡命文学
祖国を離れた作家が、喪失感と多文化的視点から創作する文学。高は1987年に渡仏後、この系譜に新たな中国語テクストを加えた。
代名詞的語り
語り手が「私」「あなた」「彼女」などを交替させる手法。読者の主体を揺さぶり、物語世界への没入と距離化を両立させる。
文化大革命
1966〜1976年の中国の政治運動で、知識人や文化活動が弾圧された。高行健も再教育キャンプ送りとなり、初期原稿を焼却した経験を作品に反映させた。
ブレヒトの異化効果
観客へ現実を批評的に見せるため意図的に感情移入を阻害する演劇技法。高の『バス停』などはこの手法を中国語文脈で展開した。
自己翻訳
作者自身が自作を他言語に翻訳する行為。多言語作者である高は、フランス語でも作品を改稿し、テクストの多層性を強化した。
中国前衛演劇
1980年代以降の中国で、伝統的リアリズムから離れて実験的表現を追求した演劇潮流。高行健はその草分けであり、多くの上演が当局により禁止された。
天安門事件
1989年6月の民主化運動弾圧。高の戯曲『逃亡』はこの出来事を背景に、個人の選択と恐怖を描き、国外で高く評価された。
インクアート
中国水墨画の技法を現代アートとして再構築する動き。画家としての高は抽象的インク作品を制作し、テキストとの相互作用を探求した。