1977年ノーベル物理学賞
受賞理由
磁性体および無秩序系の電子構造に関する基礎的理論的研究
受賞者
アメリカ合衆国
イギリス
アメリカ合衆国
解説
金属や磁石の中では、小さな電子が道路を走る車のように動いて電気を運びます。道(結晶)がまっすぐなら電子は速く進めますが、道に石ころ(不純物や乱れ)が多いと進みにくくなります。アンダーソンさんは「石ころが多すぎると電子がほとんど動けなくなる」ことを数学で示しました。モットさんは「電子どうしが強く押し合うと、きれいな道でも止まってしまう」ことを説明しました。ヴァン・ヴレックさんは電子の回り方(スピン)が互いに向きをそろえて磁石ができる仕組みを解き明かしました。これらの研究によって、私たちはテレビやスマホなど電気製品の材料をもっと上手に選べるようになりました。
関連キーワード
アンダーソン局在
無秩序が強いとき、電子波が干渉効果により空間的に閉じ込められ、拡散係数がゼロになる現象。金属‐絶縁体転移の一形態であり、光子や音波でも類似効果が観測される。臨界指数や次元依存性はスケーリング理論で議論され、メゾスコピック物理やトポロジカル障害でも重要な役割を果たす。
モット転移
電子間のクーロン反発がバンド幅を上回ると、半整数充填の金属がギャップを持つ絶縁体に変わる転移。モット臨界点では有効質量の発散やスピンエントロピーの残存が見られ、遷移金属酸化物や有機導体で観測される。圧力・キャリアドーピング・温度で制御可能であり、高温超伝導との関連でも注目される。
交換相互作用
量子力学的な波動関数の対称性から生じる有効スピン相互作用で、鉄やコバルトが強磁性を示す主因。直接交換、超交換、RKKY交換など多様な機構があり、エネルギースケールや空間スケールは材料によって異なる。磁気記憶素子やスピントロニクスデバイスの設計指針となる。
無秩序系
原子配置やポテンシャルがランダムな固体を指し、非晶質合金、ガラス、欠陥結晶などが含まれる。無秩序は局在化、散乱時間短縮、コヒーレンス破壊などを引き起こし、電気・熱・光輸送特性に大きく影響する。統計的手法や平均場近似、ランダム行列理論が解析に用いられる。
磁性体
外部磁場がなくても自発磁化を持つ強磁性体、スピンが反平行に配置する反強磁性体など、スピン配列に特徴を持つ物質群。交換相互作用、スピン軌道相互作用、磁気異方性が性質を決定し、モーターやハードディスクから医療MRIまで幅広く利用される。
電子相関
独立電子近似では説明できない、電子同士の相互作用による多体効果。強相関系ではバンド理論が破綻し、モット絶縁体、重い電子系、不純物クラスター形成など多彩な相が現れる。動的平均場理論(DMFT)や量子モンテカルロ法が解析に使われる。
金属-絶縁体転移
温度、圧力、キャリアドーピング、無秩序、電子相関などの制御パラメータにより、伝導性が劇的に変わる量子相転移。アンダーソン型とモット型が代表例で、臨界導電率や臨界指数が研究されている。省エネルギースイッチング素子や赤外線センサへの応用が期待される。
バンド理論
結晶の周期ポテンシャルに基づき、電子のエネルギーが離散的な帯(バンド)を形成するモデル。状態密度や有効質量の計算により半導体や金属の基本特性を説明するが、強相関や無秩序が強い場合には補正が必要。第一原理計算(DFT)と併用されることが多い。
ハバード模型
最近接ホッピングtとオンサイト相互作用Uのみを考慮した単純な格子模型。低次元でのモット転移、スピン液体、d波超伝導など多彩な現象を再現し、冷却原子実験でも実装される。解析法としてDMFT、ベーテ格子解、量子ウォークなどがある。
スピン
電子や陽子などが持つ量子力学的な“回転”に対応する角運動量。磁気モーメントと結びつき、磁石の性質を決定する。情報をスピンで運ぶスピントロニクスは、熱雑音に強い次世代メモリとして研究が進む。スピンポンプや量子ビットにも応用される。