1985年ノーベル物理学賞

受賞理由

量子ホール効果の発見(Phys. Rev. Lett. 45, 494–497, 1980;Metrologia 21, 11–19, 1985)

受賞者

クラウス・フォン・クリッツィング
クラウス・フォン・クリッツィング

西ドイツ西ドイツ

解説

磁石を近づけると電気が流れ方を変える材料がありますが、普通はその変化はなめらかです。クラウス・フォン・クリッツィングさんは、薄い板をとても冷やし強い磁石をかけると、電気の流れにくさ(抵抗)が階段のようにピタッと決まった値になることを発見しました。この値はプランク定数と電子の電荷という自然の基本数字だけで説明でき、世界の誰が測っても同じ数になります。

関連キーワード

量子ホール効果

量子ホール効果は、二次元電子系に強磁場を加え極低温にするとホール抵抗がh/e^2の整数または分数倍に固定される現象である。縦方向抵抗がほぼゼロになり電流が散逸しない点が特徴で、プランク定数hと電子電荷eを結び付けることで計量標準に応用できる。整数型と分数型があり、後者では電子間相互作用が重要になる。トポロジー的に保護されたエッジ状態の存在が理論的背景にある。

ホール抵抗

ホール抵抗は電流Iを流す導体に磁場をかけたときに横方向に生じる電圧V_HをV_H/Iで表した量である。通常はキャリア濃度や温度により連続的に変化するが、量子ホール領域では階段状のプラトーを示し正確に量子化される。この特性により国際標準抵抗として用いられ、半導体デバイスの品質評価にも役立っている。

ランダウ準位

ランダウ準位は、磁場中で電子が円運動することでエネルギーが離散化した状態を指す。二次元系では縮退度が大きく、フェルミ準位が準位間のギャップに入ると散乱のない輸送が現れる。量子ホールプラトーは、充填因子が変わらない範囲でランダウ準位が完全に満たされていることに対応する。

二次元電子ガス

二次元電子ガス(2DEG)は半導体ヘテロ接合などで電子が厚さ数ナノメートルの層に閉じ込められ、実質的に二次元的に運動する系である。高移動度を実現しやすく、強磁場下で顕著な量子効果を示す。量子ホール効果の実験ではGaAs/AlGaAsヘテロ構造2DEGが標準的に用いられた。

プランク定数

プランク定数hは量子力学の基本定数で、光子エネルギーE=hνや運動量と波長の関係p=h/λに現れる。量子ホール抵抗R_K=h/e^2に直接登場し、電気抵抗の定義に組み込まれている。2019年のSI単位改定ではhの値が固定され、キログラムやアンペアの再定義に貢献した。

基本電荷

基本電荷eは電子が持つ電荷量で、電磁気学の中心的定数である。量子ホール抵抗式R_K=h/e^2を通じて抵抗の国際標準と結び付いている。新しいSI単位系ではeも固定値とされ、電流や物質量の高精度計測を支えている。

トポロジカル不変量

トポロジカル不変量は系を連続的に変形しても変わらない数学的量で、量子ホール系ではチェルン数が代表例である。チェルン数が整数であることがホールコンダクタンスの量子化を保証し、散乱や欠陥に対して頑健性を与える。こうした概念はトポロジカル絶縁体や半金属など他の量子物質相にも拡張されている。