1999年ノーベル物理学賞

受賞理由

物理学における電弱相互作用の量子構造の解明(Nucl. Phys. B7(1968) 637-650, B33(1971) 173-199, B35(1971) 167-188, B44(1972) 189-213, B50(1972) 318-353)

受賞者

ヘーラルト・トホーフト
ヘーラルト・トホーフト

オランダオランダ

マルティヌス・フェルトマン
マルティヌス・フェルトマン

オランダオランダ

解説

私たちの世界には、重力や磁石の力のような目に見えない力がいくつかあります。電気の力と弱い力という二つは、とても小さな世界で一緒に働いていることが分かりました。トホーフトさんとフェルトマンさんは、この二つの力が同じ「ルールブック」から生まれていることを数学で証明しました。これによって、粒子がどのように現れたり消えたりするかを正確に計算できるようになりました。彼らの仕事は、電子レンジや医療で使われる放射線など、私たちの生活を支える技術のもとになっています。

関連キーワード

電弱相互作用

電磁相互作用と弱い相互作用を一本化した力。光子、Wボソン、Zボソンを媒介粒子とし、SU(2)L×U(1)Y対称性とヒッグス機構により質量の有無を説明する。ビッグバン初期には二つの力が区別できない形で存在したと考えられる。β崩壊や太陽の核融合計算に欠かせず、加速器実験では高エネルギーで対称性回復が探究される。宇宙背景放射やニュートリノ振動の解析にも重要な役割を果たす。

ゲージ理論

場の位相や内部空間の回転に対し物理法則が変わらないという“対称性”を基本原理とする理論。電磁気学はU(1)ゲージ理論、量子色力学はSU(3)ゲージ理論として表現される。ゲージ場は力を媒介する粒子として自然に現れ、相互作用の強さや構造を決定する。数学的にはファイバー束や接続形式で記述され、微分幾何と深く結びつく。ノーベル賞研究は、非可換ゲージ理論に質量生成機構を組み込んでも理論が自己無撞着であることを示した。

繰り込み

量子場理論で計算すると現れる無限大を、観測可能な有限量へ再定義する手続き。裸のパラメータと測定量のずれを吸収することで、予言可能な理論を構築する。’t HooftとフェルトマンはダイメンショナルレギュラリゼーションとBRST不変性を用いて、非可換ゲージ理論でも繰り込みが成立することを示した。スケール依存性を解析するくりこみ群方程式は臨界現象や宇宙論的インフレーション研究にも応用される。現代の高エネルギー実験では、NNLO以上の精度を達成するために繰り込みスキームの選択が重要となる。

自発的対称性の破れ

物理法則は対称だが、真空状態は対称でない現象。ヒッグス場が一定値をとることで、ゲージボソンが質量を獲得し、対称性は隠れた形で残る。臨界温度を超えると対称性が回復するため、ビッグバン後の宇宙進化にも関与する。強磁性体の磁化方向が一方向にそろう現象と数学的に類似している。電弱理論の重整可能性証明は、この機構を含む場合でも量子論が崩壊しないことを保証した。

標準模型

電磁気力、弱い力、強い力を一つの枠組みで記述する素粒子物理の理論。17種類の基本粒子と3つのゲージ相互作用、ヒッグス機構を含む。’t Hooftとフェルトマンの仕事により計算が厳密化され、W・Zボソン、グルーオン、ヒッグス粒子などの発見が加速された。未説明の重力や暗黒物質、ニュートリノ質量問題が次の研究課題として残る。標準模型の精密テストは、新しい物理がどこに現れるかを探るための重要な指針となっている。