2004年ノーベル物理学賞
受賞理由
強い相互作用における「漸近的自由性」の理論的発見、およびそれを報告した一連の論文(Phys. Rev. Lett. 30 (1973) 1343–1346; Phys. Rev. D 8 (1973) 3633–3652; Phys. Rev. D 9 (1974) 980–993; Phys. Rev. Lett. 30 (1973) 1346–1349; Phys. Rep. 14 (1974) 129–180)
受賞者
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
解説
私たちの身の回りの物は小さな粒でできています。その中で「クォーク」というとても小さな粒が集まって、プロトンや中性子を作っています。グロスさん、ポリツァーさん、ウィルチェックさんは、クォーク同士がとても近づくと、お互いをあまり引っ張らなくなることを発見しました。これは友達と手をつなぎながら、くっつきすぎると逆に手の力が弱くなるようなイメージです。この性質を『漸近的自由性』と言い、クォークのふしぎな世界を説明する大切なカギになりました。
関連キーワード
漸近的自由性
エネルギーが高くなる(距離が短くなる)と強い相互作用の結合定数が小さくなり、クォークやグルーオンがほぼ自由粒子として振る舞う性質。QCD特有の負ベータ関数に由来する。
強い相互作用
原子核内でクォークを結びつける自然界の基本力。グルーオンを交換粒子とするゲージ理論(QCD)で記述される。
量子色力学 (QCD)
色荷を持つクォークとグルーオンからなるSU(3)ゲージ理論。漸近的自由性と閉じ込めという二面性をもち、標準模型における強い力の理論的枠組み。
グルーオン
強い力を媒介する質量ゼロのボソン。自身も色荷を持つため相互作用し合い、β関数を負にする決定的要因となる。
クォーク閉じ込め
クォークやグルーオンが単独では観測されず、ハドロン内部に束縛される現象。低エネルギー領域で結合定数が発散することに起因する。
ベータ関数
エネルギースケールによる結合定数の変化率を示す関数。QCDでは負となり、漸近的自由性をもたらす。
ランニング結合定数
エネルギーに依存して値が変わる結合定数。α_s(Q^2)は高エネルギーで小さく、低エネルギーで大きくなる。
標準模型
電磁気力・弱い力・強い力を統一的に説明する素粒子物理の理論体系。漸近的自由性の発見はその完成に不可欠だった。
深部非弾性散乱
高エネルギー電子やニュートリノを原子核に衝突させ、内部のクォーク構造を調べる実験手法。スケーリング違反の測定で漸近的自由性が検証された。
ジェット事象
加速器衝突で生成されたクォークやグルーオンがハドロン化して細い粒子の束として検出される事象。三ジェットはグルーオン放出を示す直接的証拠。