1912年ノーベル生理学・医学賞
受賞理由
血管縫合および臓器の移植に関する研究
受賞者
フランス
解説
アレクシス・カレルさんは、破れた血管を上手につなげる縫い方を考えました。まるで切れたストローをテープでぴったり合わせるように、血が漏れないように工夫したのです。この方法のおかげで、人や動物のけがした血管を治す手術が安全になりました。さらに、体の中の臓器を別の体に移し替える実験にも成功し、将来の臓器移植につながる道を開きました。私たちが大きなけがをしても助かるチャンスが増えたのは、この発見のおかげです。
関連キーワード
血管縫合
外科医が切れた動脈や静脈を再接続するための縫合法。カレルの三角法は円形を保ち血流障害を防いだ。現代のマイクロサージャリーでも基本原理として用いられ、吻合部の狭窄や血栓を最小限に抑える。人工血管移植や冠動脈バイパス術にも応用される。
臓器移植
病気や損傷した臓器を健康な臓器で置き換える医療行為。カレルは犬で腎臓や心臓を移植し、移植外科の礎を築いた。免疫拒絶の課題を示し、後の免疫抑制剤開発の動機となった。現在では腎臓、肝臓、心臓、肺など多数の臓器が移植可能で、生命予後を大幅に改善している。
吻合(アナストモーシス)
二つの管腔構造(血管、腸管など)をつなげて内容物の流れを再開させる外科操作。カレルの研究以前は漏れや狭窄が多発した。彼の方法により手術時間と合併症が減少し、大手術の安全性が向上した。今日では自動吻合器やステープラーも開発されたが、基本概念は変わらない。
免疫拒絶反応
移植された臓器や組織を受け入れ側の免疫系が攻撃する現象。カレルの動物実験は、この反応が移植成否を決めることを早期に示した。後にHLA適合性研究や免疫抑制剤発見につながった。拒絶を抑えるプロトコルが確立され、長期生着率が向上した。
無菌操作
細菌汚染を防ぐための手術室・器具・手指の管理方法。カレルは血管縫合や移植を成功させるため、厳格な無菌操作を採用した。感染率を低下させ、外科手術の安全性を高めた。現在のクリーンルームや消毒手順の原型となっている。
組織培養
生体外で細胞や組織を栄養液中で維持・増殖させる技術。カレルは長期培養の報告(有名な“永遠の心臓”実験)で注目を集め、細胞生物学と再生医療の発展につながった。適切な栄養、温度、pHの管理が重要であり、ワクチン製造やがん研究でも利用される。