1919年ノーベル生理学・医学賞

受賞理由

免疫に関する諸発見

受賞者

ジュール・ボルデ
ジュール・ボルデ

ベルギーベルギー

解説

私たちの体には、バイキンやウイルスが入ってくるとやっつけてくれる『免疫(めんえき)』という仕組みがあります。ジュール・ボルデは、血液の中にある小さな成分が、バイキンをこわしたりくっつけたりして守ってくれることを見つけました。これは、掃除機がゴミを吸い取るように、体の中の『お助けマン』がゴミ(バイキン)を取り除くイメージです。彼の発見のおかげで、病気かどうかを調べる検査がうまれ、早く治療できるようになりました。

関連キーワード

免疫

生体が病原体や異物を識別し排除する生体防御機構。自然免疫と獲得免疫に大別され、物理的バリア、食細胞、補体、抗体、T細胞などが協調して働く。ボルデの研究は特に獲得免疫における液性因子の役割を明確にした。ワクチン開発や自己免疫疾患理解の基礎概念であり、公衆衛生と臨床医学を支える根幹である。

補体

血清中に存在する約30種類のタンパク質群。抗体‐抗原複合体に結合すると連鎖的に活性化され、溶菌作用、オプソニン化、炎症促進を担う。ボルデが初めてその存在と機能を系統的に示し、補体結合反応という診断法につなげた。補体欠損症は重篤な感染症や自己免疫疾患の原因となり、臨床でも重要視される。

溶血

赤血球が破壊され、ヘモグロビンが血漿中に放出される現象。ボルデは補体と抗体が協働して羊赤血球を溶かすモデルを構築し、免疫反応の実験系として利用した。溶血試験は血液型判定や補体活性測定に応用されるほか、薬剤性溶血性貧血などの病態解明にも寄与する。

血清学

抗体や抗原を血清中で測定し、感染症・免疫疾患を診断する学問分野。補体結合反応、ELISA、免疫蛍光など多彩な検査法が含まれる。ボルデは血清学のパイオニアであり、その技術は輸血医療、ワクチン評価、疫学調査に不可欠となった。

ボルデ・ジャング反応

ボルデとジャングが考案した補体結合反応の一形態。抗原‐抗体複合体に補体が固定されるかどうかで感染症の有無を判定する。のちにワッセルマン反応(梅毒検査)などへ発展し、20世紀初頭の標準診断技術となった。

補体結合反応

血清中の抗体を測定する古典的検査法。試料に抗原と補体を加え、残存補体の有無を指標に抗体の存在を定性・定量する。ボルデの発見を実用化した最初の大規模診断システムで、感染症からホルモン測定まで応用範囲が広い。

抗体

免疫系のB細胞が作るY字形タンパク質で、特定の抗原と高い特異性で結合する。抗体は補体の活性化や食細胞への標的提示を行い、病原体を中和する。ボルデ研究が示したように、抗体は単独ではなく補体などと協働して効果を発揮するケースが多い。

抗原

免疫系が『異物』と認識する分子。タンパク質、糖鎖、核酸などが該当し、抗体やT細胞受容体と特異的に結合する。ボルデの補体結合反応は、抗原‐抗体複合体形成を利用して抗体量を測定した。抗原の概念はワクチン設計やアレルギー機序解明の要となる。

細菌学

細菌の形態・代謝・病原性を研究する微生物学の一分野。19世紀末から20世紀初頭にかけて、パスツール、コッホ、ボルデらが発展させた。免疫学と密接に関連し、抗生物質開発や感染症制圧に大きく寄与した。

百日咳菌

百日咳を引き起こすグラム陰性桿菌で、ボルデが最初に単離した。この発見により、ワクチン開発と血清診断が進み、乳幼児死亡率が大幅に低下した。現在でも細胞性毒素と免疫逃避機構の研究対象として重要である。