1943年ノーベル生理学・医学賞(1)
受賞理由
ビタミンKの発見
受賞者
デンマーク
解説
私たちがけがをすると血が出ますが、すぐに固まって止まります。ダムさんはヒヨコに普通のえさを与えない実験をして、その血が止まらなくなることに気づきました。原因はえさの中に足りない小さな栄養で、彼はこれを「凝固ビタミン」と呼びました。その頭文字がドイツ語の“K”だったので、ビタミンKと名づけられました。ビタミンKはほうれん草、キャベツ、海藻などの緑の食べ物に多く含まれます。だから野菜をしっかり食べることが、けがをしたとき安全につながると教えてくれました。
関連キーワード
ビタミンK
ビタミンKは脂溶性のナフトキノン化合物群の総称です。主に植物由来のフィロキノン(K1)と腸内細菌由来のメナキノン(K2)に分けられます。血液凝固因子を活性化するγ-カルボキシル化反応の補酵素として機能し、出血を防ぎます。また、骨代謝や血管石灰化の制御にも関わり、生活習慣病の研究対象にもなっています。緑色葉菜、納豆、肝臓などに多く含まれ、通常の食事で不足することは稀ですが、新生児では補充が推奨されています。
血液凝固
血液凝固は、出血時に血液をゼリー状に固めて止血する生体防御反応です。複数の凝固因子が瀑布状に活性化するカスケード機構により進行します。ビタミンK依存性因子(II, VII, IX, X)はカルシウム結合部位を持ち、止血プラグ形成に必須です。凝固過程の異常は出血傾向や血栓症として現れ、臨床検査ではPTやAPTTが用いられます。抗凝固薬や外科手技におけるビタミンK投与は、このカスケード制御に基づいています。
プロトロンビン
プロトロンビン(凝固因子II)は、肝臓で合成される血液凝固酵素の前駆体です。ビタミンK依存的にGla化されることでカルシウム結合能を獲得し、活性化部位に膜結合します。トロンビンに変換されるとフィブリノーゲンをフィブリンへ切断し、最終的な血栓を形成します。プロトロンビン時間(PT)は、この因子の機能を反映する臨床検査です。遺伝的欠損やビタミンK欠乏、ワルファリン投与はプロトロンビン濃度を低下させます。
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンは油に溶けやすい性質を持つビタミンA, D, E, Kの総称です。体内では主に肝臓や脂肪組織に蓄積され、水溶性ビタミンより排泄されにくいという特徴があります。吸収には胆汁酸とミセル形成が必要で、脂質吸収障害では欠乏症が起こりやすくなります。過剰摂取するとAとDでは中毒症状を生じる一方、KとEは比較的安全域が広いとされています。脂溶性という性質が、ビタミンKが脂質除去飼料で失われた理由でもあります。
γ-グルタミルカルボキシラーゼ
γ-グルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)は、ビタミンK依存的にグルタミン酸残基をγ-カルボキシグルタミン酸に変換する膜酵素です。小胞体内腔で作用し、補因子としてビタミンKヒドロキノンを必要とします。カルボキシル化により生成したGla残基はカルシウムと結合し、凝固因子がリン脂質膜に吸着する足場を提供します。GGCX遺伝子変異は出血を伴う遺伝性凝固障害を引き起こします。ワルファリンはビタミンK再還元を阻害することでGGCXの基質を枯渇させ、間接的に凝固能を低下させます。
骨形成
骨形成は骨芽細胞が新しい骨基質を分泌し石灰化させる過程です。オステオカルシンは骨芽細胞特異的タンパク質で、ビタミンK依存的にGla化されます。Gla化されたオステオカルシンはハイドロキシアパタイトと結合し、骨の硬さと弾力を調整します。ビタミンK不足は骨密度低下や骨折リスク増加と関連することが疫学研究で示唆されています。したがってダムの発見は、止血のみならず骨健康の理解にも寄与しました。