1986年ノーベル生理学・医学賞
受賞理由
成長因子の発見
受賞者
イタリア,
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
解説
私たちの体は何兆もの細胞からできています。細胞が大きくなったり新しく生まれたりするときには「合図」を出すタンパク質が必要です。その合図が「成長因子」と呼ばれます。レーヴィ=モンタルチーニさんとコーエンさんは神経を伸ばす成長因子や皮ふを育てる成長因子を初めて見つけました。この発見によって、体がどうやって形を作るのか、病気の治療にどう役立つかが分かるようになりました.
関連キーワード
成長因子
成長因子は細胞外で分泌されるタンパク質またはペプチドであり、細胞増殖・分化・生存を制御します。受容体に結合すると細胞内シグナル伝達経路が活性化され、転写因子や代謝酵素の発現が変化します。発生過程では部位特異的な濃度勾配を形成して臓器の形態を決定します。組織が損傷した際には修復を促すサイトカインとして機能します。不均衡が生じると腫瘍形成や線維化など多様な病理を引き起こすため、厳密な制御が必要です.
神経成長因子
NGFは最初に同定された成長因子で、感覚神経や交感神経の生存と軸索伸長を維持します。TrkA受容体に高親和性で結合し、MAPK・AKT経路を介して細胞骨格再編成と抗アポトーシスシグナルを伝えます。p75NTRとの二量体形成によりシグナル特異性が変化し、場合によってはプログラム細胞死を誘導します。アルツハイマー病や末梢神経障害でNGFレベル変動が観察され、治療用リコンビナントタンパク質や遺伝子治療が検討されています。慢性疼痛では過剰なNGFが痛覚過敏を増強するため、抗NGF抗体が臨床試験で評価されています.
上皮成長因子
EGFはEGFRファミリーの古典的リガンドで、上皮細胞や線維芽細胞の増殖を促します。EGFRの自己リン酸化によりRas-Raf-Erk、PLCγ、STAT経路が活性化され、細胞周期がG1からS期へ進行します。がん細胞ではEGFRの過剰発現や変異がしばしば観察され、異常な増殖シグナルのドライバーとなります。ゲフィチニブやエルロチニブなどの小分子チロシンキナーゼ阻害薬はEGFR変異肺がんの第一選択治療となりました。創傷治癒や角膜損傷の局所療法としてEGF含有製剤も臨床応用されています.
受容体型チロシンキナーゼ
RTKは細胞膜を貫通するタンパク質で、細胞外リガンド結合ドメインと細胞質側チロシンキナーゼドメインを持ちます。リガンド結合により二量体化し、相互にチロシンリン酸化を行って活性化されます。リン酸化残基はアダプタータンパク質をリクルートし、MAPK・PI3K・JAK/STATなど多岐にわたる経路を作動させます。RTK遺伝子の増幅や点突然変異はがん、糖尿病合併症、発達障害など多様な疾患の原因になります。現在承認されている分子標的薬の多くはRTK阻害薬や抗体であり、個別化医療の中心的ターゲットとなっています.
細胞シグナル伝達
細胞シグナル伝達は外部情報を細胞内へ伝える分子ネットワークの総称です。受容体が刺激を受けると、リン酸化・Gタンパク質活性化・セカンドメッセンジャー生成などの初期反応が起こります。それらがカスケード的に拡大して転写調節や細胞骨格変化を導き、最終的に増殖・分化・運動などの応答を決定します。シグナルは時間・空間的に緻密に制御され、クロストークにより複雑な情報演算が行われます。異常シグナルはがん、免疫不全、神経変性など多彩な病態を引き起こすため、システム的理解と創薬応用が進められています.