2011年ノーベル生理学・医学賞(2)

受賞理由

樹状細胞と、獲得免疫におけるその役割の発見

受賞者

ラルフ・スタインマン
ラルフ・スタインマン

カナダカナダ

解説

体の中には、病原体を捕まえて免疫細胞に教える「樹状細胞」という先生のような細胞があります。スタインマンさんは、この樹状細胞を初めて見つけ、免疫の仕組みを説明しました。樹状細胞はばい菌の情報を持ってリンパ節へ行き、T細胞に“敵はこれだよ”と伝えます。するとT細胞はパワーアップして病原体と戦います。この発見のおかげで、ワクチンやがん治療の新しい方法が生まれました。

関連キーワード

樹状細胞

樹状細胞(DC)は樹の枝のような突起を持つ抗原提示細胞で、体内のほぼすべての組織に存在します。未熟DCはパターン認識受容体で病原体を取り込み、リンパ系へ移動すると成熟してT細胞活性化能を獲得します。MHCと共刺激分子を高発現し、ナイーブT細胞を初めて刺激できる唯一の細胞と考えられています。DCが放出するサイトカインや発現するリガンドは、Th1/Th2/Th17/CTLなどT細胞の分化運命を決めます。近年はプラズマトイドDCやランゲルハンス細胞など複数サブセットが同定され、それぞれ異なる病理やワクチン応答に関与するとわかってきました。

獲得免疫

獲得免疫は抗原特異的なT細胞とB細胞によって構成され、記憶を形成して二度目の感染に素早く対応します。樹状細胞が抗原を提示し共刺激シグナルを与えることで、ナイーブT細胞が活性化されるのが最初のステップです。ヘルパーT細胞はB細胞を助け、高親和性抗体産生やクラススイッチを誘導します。CTLは感染細胞や腫瘍細胞を直接殺傷し、免疫監視を担います。獲得免疫の破綻は自己免疫疾患や慢性感染症、がん免疫回避の原因となります。

抗原提示

抗原提示とは、細胞内外のタンパク質断片をMHC分子に載せてT細胞に“見せる”プロセスです。樹状細胞はエンドサイトーシスやクロスプレゼンテーションで外来抗原をクラスI/II経路の両方に持ち込みます。十分な共刺激シグナルが欠けると、T細胞は不活化またはアネルギー状態に陥ります。抗原提示効率を高める技術はがんワクチンや感染症ワクチン開発の鍵となっています。一方、自己抗原の提示制御が破綻すると自己免疫やGVHDが生じます。

MHCクラスII

MHCクラスII分子は主に樹状細胞、マクロファージ、B細胞など抗原提示細胞に発現します。リソソームで分解された外来抗原ペプチドをインバリアントチェーン置換後の結合溝に収め、CD4+T細胞に提示します。HLA遺伝子多型はペプチド結合性や自己免疫疾患感受性を左右します。クラスIIの発現はCIITAによって制御され、サイトカイン環境がその転写を調節します。ヒトクラスIIを強制発現したマウスモデルはワクチンや免疫病理の研究に利用されています。

免疫寛容

免疫寛容は自己や無害な抗原に対して免疫応答を起こさない状態を指します。樹状細胞が低共刺激や特定サイトカイン環境で抗原提示すると、Tregが誘導され寛容が成立します。胸腺でのネガティブセレクションと末梢でのチェックポイントが二重に働き誤反応を防ぎます。寛容破綻は自己免疫疾患やアレルギーの発症に直結します。DCを利用したトレランス誘導療法はI型糖尿病や多発性硬化症で臨床試験中です。

ワクチン開発

樹状細胞の強力なT細胞活性化能はワクチンの“指揮官”として利用されています。ex vivoで抗原をロードした自家DCを体内に戻す療法はがんワクチンの一形態です。また、mRNAワクチンは体内DCが抗原を翻訳・提示することを想定して設計されています。アジュバントによるTLR刺激と組み合わせることで、DC成熟を促しより強い免疫記憶が得られます。DCサブセット特異的な標的化ナノ粒子は次世代ワクチンプラットフォームとして注目を集めています。

サイトカイン

サイトカインは免疫細胞が分泌する情報伝達タンパク質で、インターロイキン、インターフェロン、TNFなど多種類があります。樹状細胞はIL-12やIL-10などを放出してT細胞分化の方向性を決定します。サイトカインの過剰産生はサイトカインストームを誘発し、重症感染やCAR-T療法副作用の主因になります。一方、特定サイトカインを投与または阻害する治療は自己免疫疾患やがんで成功を収めています。サイトカインネットワークの定量解析は免疫反応の予測モデル開発に不可欠です。

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