2015年ノーベル生理学・医学賞(2)
受賞理由
マラリアに対する新たな治療法に関する発見
受賞者
中華人民共和国
解説
マラリアは蚊に刺されることでうつる熱の高い病気です。昔の薬が効かなくなって困っていました。屠呦呦さんは漢方薬の本を調べ、植物「クソニンジン」から病気を治す成分を取り出しました。その成分は「アルテミシニン」と呼ばれ、マラリアのもとをすばやく倒します。この薬のおかげでたくさんの子どもたちの命が救われました。
関連キーワード
マラリア
主にPlasmodium falciparumやP. vivaxが引き起こす寄生虫病で、毎年数億人が感染します。高熱、貧血、脳症を伴い、特に5歳未満の子どもに致命的です。蚊(Anopheles属)が媒介し、流行地では経済発展の大きな障害となります。殺虫剤と蚊帳、ACT、ワクチンが対策の柱です。薬剤耐性と気候変動による分布拡大が新たな課題です。
アルテミシニン
青蒿から得られるセスキテルペン系抗マラリア薬で、特徴的なエンドペルオキシド結合を持ちます。赤血球内で鉄イオンと反応してラジカルを生成し、原虫を速やかに殺滅します。半減期が短いため併用療法が必須です。導出体としてアルテメテル、ジヒドロアルテミシニンが臨床使用中です。ペルオキシド骨格は合成薬開発のテンプレートにもなっています。
Artemisia annua
キク科の一年草で「青蒿」「スイートワームウッド」とも呼ばれます。中国では古来から解熱薬として利用されてきました。葉に0.1%前後のアルテミシニンを含有します。遺伝子改変や育種により高含有株が開発されています。持続可能なアルテミシニン供給に不可欠な作物です。
ACT(アルテミシニン併用療法)
アルテミシニン系薬と長時間作用型パートナー薬を併用する治療法です。相乗効果で寄生虫を完全排除し、耐性発現を遅延させます。WHOは第一選択治療として推奨しています。一般に3日間で完結し、症状改善が迅速です。適切な投与遵守が公衆衛生上の鍵となります。
薬剤耐性
マラリア原虫はクロロキンやスルファドキシンなど多くの薬剤に耐性を獲得してきました。Kelch13変異によるアルテミシニン耐性は東南アジアで確認されています。耐性の拡散は治療失敗と死亡率増加につながります。ACT導入と新薬開発は耐性抑制の戦略です。ゲノム監視と迅速診断が重要になっています。
ハマダラカ
マラリアを媒介する蚊の総称で、約30種が主要ベクターとして知られます。夜行性で、人の血を吸う際に原虫を伝播します。殺虫剤処理蚊帳や室内残留噴霧は咬傷リスクを大幅に下げます。近年ピレスロイド抵抗性が問題化しています。ゲノム編集技術によるベクター制御が研究されています。