1959年ノーベル平和賞
受賞理由
生涯を通じた国際平和と国際協力への熱心な活動に対して
受賞者
イギリス
解説
フィリップ・ノエル=ベーカーさんは、戦争をなくし世界中の国が仲良くできるように働いた人です。彼はスポーツ選手でもあり、走る速さを競うオリンピックに出たこともあります。けれども一番大事にしたのは、みんなが安心して暮らせる平和な地球をつくることでした。国と国が話し合う会議を開き、武器を減らすためにがんばりました。私たちがけんかをやめて仲直りするときのように、国同士も話し合えば仲良くなれると信じていました。だからノーベル平和賞をもらいました。
関連キーワード
軍備縮小
軍備縮小とは、国家が保有する武器や兵員の数を減らすことです。ノエル=ベーカーは第一次世界大戦後の巨大な軍隊が再び戦争を呼び込むと考えました。そこで段階的に武器を減らし、国際機関が検証する仕組みを提唱しました。この考え方は核兵器削減交渉や通常兵力の削減協定に応用されています。現在でもSTART条約や新STARTなどで実際に行われている枠組みの原点になっています。
国際連盟
国際連盟は第一次世界大戦後の1919年に設立された世界初の集団安全保障機構です。ノエル=ベーカーは事務局に勤務し、会議文書の作成や加盟国間の調停を担当しました。連盟は第二次世界大戦を防げなかったものの、国際協力の定常的な場をつくった点が重要です。その実務経験が彼の後年の国連改革提案の基盤となりました。また保健機関や難民機関などの専門組織は現在のWHOやUNHCRの原型になっています。
核兵器禁止運動
核兵器禁止運動は、核兵器の開発・配備・使用を全面的に禁止しようとする市民・政府・国際機関の活動を指します。ノエル=ベーカーは1940年代後半から核実験モラトリアムを訴え、議会演説で大気圏内実験の人体影響を紹介しました。彼の提案は当時の世論形成に寄与し、部分的核実験禁止条約(PTBT)への道を開きました。現在ICANが推進する核兵器禁止条約(TPNW)もこの流れの延長線上にあります。運動は被爆者の証言や科学者の調査報告を通じて倫理的・人道的側面を強調しています。
積極的安全保障
積極的安全保障とは、敵対勢力を抑止するための軍事力の総和ではなく、協力的制度と信頼醸成策を通じて安全を高める考え方です。ノエル=ベーカーは安全保障を「ゼロサム」から「プラスサム」へ転換する必要があると主張しました。欧州安全保障協力機構(OSCE)の信頼醸成措置やEUの統合政策はこの思想に影響を受けています。概念は人間の安全保障アプローチと親和性があり、経済開発や環境対策と結び付けて議論されます。軍縮と並行して行うことで、長期的に戦争の要因を弱めることが期待されています。
ジュネーブ軍縮会議
1932年から1934年にかけて開かれたジュネーブ軍縮会議は、第一次世界大戦後最大規模の多国間軍縮交渉でした。ノエル=ベーカーは英代表団顧問として議題整理や草案作成を担当し、軽兵器から化学兵器に至る包括的削減案を提示しました。会議自体はナチス・ドイツの脱退などで決裂しましたが、検証制度やカテゴリー別上限という概念を世界に浸透させました。冷戦期の戦略兵器制限交渉(SALT)や化学兵器禁止条約(CWC)は当会議の技術的議論を土台としています。したがって、会議は不成功に終わったものの制度設計の遺産は大きいといえます。