1904年ノーベル物理学賞
受賞理由
重要な気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見
受賞者
イギリス
解説
空気は私たちが吸う見えない気体の混合物ですが、とても軽くて量るのが大変です。レイリー卿は風船の重さをくらべるようにして、いろいろな気体の重さ(密度)を正確に調べました。その途中で、空気の中に知られていない新しい気体が混ざっていることに気付き、それをアルゴンと名づけました。アルゴンは火もつかずに色もなく、化学反応をほとんどしない「おとなしい」気体です。私たちが今学ぶ理科の教科書にアルゴンが出てくるのは、この発見のおかげなのです。
関連キーワード
アルゴン
アルゴンは元素記号Ar、原子番号18の希ガス元素であり、大気中に約0.93%含まれます。その名はギリシャ語の「怠け者」に由来し、化学反応性が極めて低いことを示しています。発光放電中に赤紫色の光を放つ性質から、蛍光灯やプラズマディスプレイに利用されています。液体アルゴンは低温物理実験や粒子検出器のシンチレータとしても重要です。地球外惑星の大気解析でも基準ガスとして用いられ、宇宙化学の手がかりを提供します。
気体の密度測定
気体の密度測定は、一定体積の容器を真空後にガスで満たし、重量差を求める方法が古典的です。温度と圧力がわずかに変化しても結果が大きくずれるため、恒温槽と水銀柱による高精度圧力制御が必要です。レイリーは磁力秤と校正分銅を組み合わせ、質量差を10⁻⁴グラム単位で読取りました。今日では振動式密度計や音速測定を用いた非破壊法も普及しています。密度がわかると分子量や混合比率を推算でき、気象学、化学工業、環境計測で広く応用されます。
大気組成
大気は主に窒素78%、酸素21%からなり、残りはアルゴン、二酸化炭素、水蒸気など微量気体です。19世紀末までは窒素と酸素以外はほとんど注目されていませんでした。レイリーとラムゼーによるアルゴン同定は「空気は二成分ではない」という認識を確立しました。その後ネオンやクリプトンなど他の希ガスも大気から分離され、周期表の18族が充実しました。現代の気候研究や汚染監視は、この精密組成データを基盤にしています。
分子量
分子量(分子質量)は一つの分子が持つ相対質量で、気体の密度や蒸気圧から計算で得られます。レイリーは空気中の未知成分が窒素の分子量を引き上げていると推定し、新元素発見の手がかりにしました。現在は質量分析計が直接測定しますが、古典的手法は標準物質の校正に不可欠でした。正確な分子量は反応量計算、製薬、材料開発に必要不可欠です。さらに分子量は気体拡散係数や比熱容量の予測にも影響します。
希ガス
希ガスは周期表18族に属し、ヘリウム・ネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドンなどが含まれます。外殻電子が満たされているため化学反応性が極めて低く、常温常圧では単原子分子として存在します。この特性を利用して、希ガスは光源、レーザー媒質、高純度反応雰囲気に利用されます。アルゴン発見以前は周期表にこの族が存在せず、レイリーの研究が科学史上重要な空隙を埋めました。希ガスの異常な化学的不活性は量子力学的閉殻構造の好例として、原子物理や化学教育で頻繁に引用されます。