1907年ノーベル物理学賞

受賞理由

彼が考案した精密光学機器マイケルソン干渉計とそれによる分光学および計量学の研究

受賞者

アルバート・マイケルソン
アルバート・マイケルソン

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

光はとても速く、あっという間に私たちの目に届きます。アルバート・マイケルソンは、その光の速さや性質を調べるために「マイケルソン干渉計」という不思議な装置を作りました。この装置は光を二つの道に分け、また合わせることでしま模様(干渉縞)を作り出します。しま模様の動きを注意深く見ると、光が進んだ長さのわずかな違いを測ることができます。彼はこの方法で世界で初めてとても正確に光の速さを測りました。その技術は今のカメラ、スマートフォン、GPSなどの“正確さ”を支えるもとになっています。

関連キーワード

マイケルソン干渉計

二つの直交光路を作り、再結合させて干渉縞を観測する装置。光路差が波長の一部でも変化すれば縞が動くため、極めて高感度の長さ計が得られる。設計がシンプルでレーザーから可視光ランプまで幅広い光源に適用できる。重力波望遠鏡や半導体露光装置でも基本ユニットとして利用される。マイケルソンの発明当初から現代まで形を変えつつ計量学の中心的役割を果たしている。

干渉縞

二つ以上の光波が重なったとき、強め合う場所と弱め合う場所が交互に現れる模様。縞の位置は波長のごく小さな変化で動くため、微細な長さや屈折率の差を読み取れる。写真乾板からCCDまで検出技術は進化したが原理は同じ。縞の解析にはフーリエ変換や位相シフト法などの数学的手法が使われる。マイケルソンの業績は、この縞を計量標準へ結び付けた最初の成功例だった。

分光学

物質が発する光や吸収する光を波長ごとに分けて調べ、元素や分子の種類・状態を解析する学問。マイケルソン干渉計はスペクトル線の波長差を直接比較できるため、高分解能分光の先駆けとなった。今日のフーリエ変換赤外分光(FTIR)にも干渉計の原理が応用されている。天文学では恒星大気の化学組成解析、化学では反応追跡に欠かせない。高精度な波長計はレーザー冷却や原子時計の基礎データも提供している。

計量学

長さ・質量・時間などを国際的に統一し、産業と科学の土台を築く学問と技術の総称。マイケルソンの研究は光波長を長さの標準に利用する発想を示し、メートル原器から光速規定への移行を後押しした。現代では“秒”を原子遷移、メートルを光速と秒の積で定義しているが、その思想的背景は干渉計測にある。半導体工場や航空宇宙産業では、サブナノメートル精度の位置決めが日常的に要求される。干渉計はその要求を満たす代表的なツールとして今も第一線にある。

光速測定

光が1秒間に何キロメートル進むかを決める作業で、物理定数の中でも歴史的に最も挑戦的なテーマの一つ。マイケルソンは回転鏡法と干渉計法を組み合わせ、誤差数十ppmの精度を達成した。光速が一定である事実は相対性理論の基礎前提でもある。1983年には光速を299 792 458 m/sと固定し、逆にメートルがこの値を用いて定義されるようになった。精密光速測定は現在も可視域からマイクロ波まで行われ、新しい物理の兆候を探る手段にもなっている。

重力波検出器

LIGOやVirgoに代表される大型施設で、マイケルソン干渉計を数キロメートル規模に拡張し、鏡の間隔が10⁻¹⁹ mほど揺れるかどうかを測る。重力波が通過すると片方の腕が伸び、もう片方が縮むため、干渉縞の動きとして信号が得られる。2015年の初検出はノーベル賞級の成果となり、干渉計測の極限性能を世界に示した。レーザー強度安定化、真空技術、鏡の熱雑音低減など、多岐にわたる最先端技術が投入されている。原理的にはマイケルソンの1880年代の装置と同じであり、彼の発明が21世紀の宇宙観測を切り開いた。