1909年ノーベル物理学賞

受賞理由

無線通信の進展への貢献

受賞者

グリエルモ・マルコーニ
グリエルモ・マルコーニ

イタリア王国イタリア王国

フェルディナント・ブラウン
フェルディナント・ブラウン

ドイツ帝国ドイツ帝国

解説

今ではスマートフォンで遠くの人にすぐメッセージを送れますが、100年以上前には電線がないと通信できませんでした。マルコーニさんとブラウンさんは、空中に出した電波を使うことで“見えない糸”のように情報を届ける方法を作りました。マルコーニさんは海の向こうまで届く電波の送り方を実験で示し、ブラウンさんは電波をきれいに選び取れる機械を工夫しました。これによって船や列車が事故を防ぐための連絡を取れるようになり、人々の生活がぐっと便利になりました。私たちがラジオやWi-Fiを使えるのは、この発明が最初の一歩だったのです。

関連キーワード

無線電信

電線を使わずにモールス信号を電波で送受信する技術です。19世紀末に誕生し、船舶通信や軍事連絡で急速に普及しました。電波が地球を回折する長波帯の特性を活かし、数千キロメートルを越える通信が実現しました。同じ周波数を共有する局が増えると混信が問題となり、周波数管理の制度が生まれました。現在の無線LANや衛星通信も、この概念の延長線上にあります。

スパークギャップ送信機

高電圧をかけた電極間で火花を発生させ、急峻な電流パルスをLC回路へ注入して電波を放射する装置です。回路の自己共振周波数が送信周波数を決め、信号は連続波ではなく減衰振動列として放射されます。構造が簡単で初期無線に欠かせませんでしたが、広い帯域を占有し雑音が大きい欠点がありました。真空管発振器が登場すると急速に置き換えられました。それでも今日の雷観測やパルスレーダーの理解に役立つ教材となっています。

同調回路

コイルとコンデンサーで構成され、特定の周波数で共振する回路を指します。共振点ではインピーダンスが極大または極小になり、不要な周波数をフィルタリングできます。ブラウンは送信側と受信側の両方に同調回路を設け、選択度と送信効率を劇的に改善しました。この技術のおかげで多数局が異なる周波数で同時運用でき、電波の“チャンネル”という概念が確立しました。現代のRFフィルタ、テレビチューナー、携帯電話のバンドパス回路も同じ原理で動いています。

アンテナ

電気信号を電磁波に変換して空間へ放射したり、逆に受信したりする導体構造です。マルコーニは地面と接続した垂直アンテナを用いて放射効率を高めました。アンテナの長さは波長の1/4や1/2に設計され、指向性やインピーダンスに影響します。今日ではパッチアンテナやフラクタルアンテナなど多様な形状が開発されていますが、マルコーニの基本原理は変わりません。電波伝搬特性を理解するうえで最も重要なハードウェア要素の一つです。

コヒーラ

金属粉を封入したガラス管で作られ、電波を受けると粉末が凝集して電気抵抗が急減する検波器です。マルコーニはこの性質を利用してモールス信号を電気パルスに変換しました。受信後はハンマーで軽く叩き粉をほぐす必要があり、機械的リセット機構が特徴でした。感度は高いものの雑音に弱く、後に鉱石検波器や真空管検波器に取って代わられました。それでも初期無線技術史を語るうえで象徴的なデバイスです。

長距離通信

都市や大陸、海洋を越えて情報を伝える技術の総称です。無線電信の成功により、海底ケーブルが切れても船舶や植民地との連絡が継続できました。これは無線の政治・経済的価値を一気に高め、各国が国際周波数会議を開催するきっかけとなりました。後に短波帯の電離層反射が利用され、さらに遠距離でも低出力で通信できるようになりました。今日のインターネットや衛星回線は、長距離通信の発展が積み重なった到達点です。