1910年ノーベル物理学賞
受賞理由
気体および液体の状態方程式に関する研究
受賞者
オランダ
解説
空気や水は目に見えない小さな粒(分子)からできています。ファン・デル・ワールスさんは、分子どうしが引っ張り合ったりぶつかったりする力を考えて、気体と液体のふるまいを説明する式を作りました。たとえば風船をふくらませるとき、空気がどれくらいの重さで押し返すかを計算できるのです。水があたたかいと湯気に変わり、冷やすとまた水に戻る理由もその式で説明できます。今日の冷蔵庫や気象予報にも役立っています。私たちの日常の「みえない世界」を数字で理解できるようにしたことが大発見でした。
関連キーワード
状態方程式
物質の圧力、体積、温度などの関係を数式で表すもの。気体・液体・固体の熱力学的性質を計算する基本ツールである。ファン・デル・ワールス方程式は最初の実在流体用状態方程式として歴史的意義を持つ。産業では混合ガスの設計や相平衡計算に活用される。宇宙物理や高圧科学でも不可欠な概念。
ファン・デル・ワールス力
分子間に働く弱い引力や斥力の総称。誘起双極子相互作用やロンドン分散力を含む。液体がまとまる、タンパク質が折りたたまれるなど多様な現象の根底にある。ファン・デル・ワールス方程式の“a”定数はこれらの力を平均的に表す。ナノテクノロジーや材料科学でも設計指針として重要。
臨界点
気体と液体の区別が消える温度・圧力条件のこと。物質はこの点で密度差がゼロになり、相間境界が存在しない。ファン・デル・ワールスは理論的に臨界係数を算出し、普遍性の概念を提示した。臨界点付近では相転移に伴う揺らぎが発散し、臨界現象が現れる。発電用超臨界CO2タービンなど工学応用が急増している。
分子間相互作用
分子どうしが及ぼし合う力やエネルギーの総称。静電相互作用、誘導相互作用、分散力、短距離斥力など多様。気体の非理想性や液体の粘性・表面張力の原因となる。ファン・デル・ワールスの研究はこれら相互作用を巨視的量で捉える第一歩だった。現代では量子化学計算により詳細なポテンシャル曲面が得られ、材料設計が精密化している。
連続説
気体と液体は本質的に同じ物質状態であり、途切れなく移り変わるとする考え方。温度と圧力を適切に調整すると気体から液体へ連続的に変化し、臨界点で境界が消える。ファン・デル・ワールス方程式が数学的裏付けを与えた。連続説は相図の理解を深め、超臨界流体研究の基盤となった。食品抽出やグリーンケミストリーで応用が進む。
液化
気体を冷却・加圧して液体に変える操作。空気の液化技術は医療用酸素やロケット推進剤の大量生産を可能にした。ファン・デル・ワールスの理論は液化条件の設計指針を与えた。今日では冷凍サイクルやLNG(液化天然ガス)輸送にも不可欠。温室効果ガス回収のためのCO2液化研究も進む。
理想気体
分子間に力も体積もないと仮定した仮想的な気体モデル。PV=nRTの単純な式で記述できる。現実の気体は低圧・高温で理想気体に近づくが、密度が高まるとズレが顕著になる。そのズレを説明するためにファン・デル・ワールス方程式が提案された。理想気体モデルは熱力学の入門概念として今も不可欠である。