1912年ノーベル物理学賞

受賞理由

灯台や灯浮標などの照明用ガス貯蔵器に取り付ける自動調節機の発明

受賞者

ニルス・グスタフ・ダレーン
ニルス・グスタフ・ダレーン

スウェーデンスウェーデン

解説

100年以上前、夜の海を照らす灯台は船の安全を守る大切な光でした。けれども昼間まで火をつけているとガスがすぐに無くなってしまいます。ニルス・グスタフ・ダレーンさんは、太陽が出ている間はガスを止め、暗くなると自動で点灯する機械を作りました。これにより灯台のガスは長持ちし、遠くの船にも明るい光を届けられるようになりました。まるで自動でオンオフする街灯のように、灯台が賢くなったのです。

関連キーワード

自動調節機

ガスの圧力と流量を一定に保ち、必要に応じて供給を停止する装置である。ダレーンの設計では二段ダイヤフラム構造が採用され、急激な圧力変化にも安定して応答した。安全弁と連動し、炎が消えた際に爆発性ガスが放出されるのを防ぐ機能も持つ。メカニカルなフィードバックのみで作動するため、電源が不要で辺境の灯台に適していた。後世の空気圧制御や燃焼機器のレギュレータに多大な影響を与えた。

アセチレンガス

炭化水素の一種で、化学式C2H2。燃焼時に非常に明るい白色光を発するため、かつては溶接や灯台光源に広く使われた。高圧下では分解爆発の危険があるが、アセトン溶解や多孔質媒体に吸蔵することで安全に貯蔵できる。ダレーンは石綿とアセトンを用いた『AGAアキュムレータ』でこの問題を解決した。現在でも溶接用燃料として重要だが、灯台ではLEDや電球に取って代わられている。

サンバルブ

太陽光の強さによって金属棒の温度差を生み、熱膨張の違いでガス弁を開閉する機械式光センサー。外部電源を一切必要とせず、降雪や霧の弱い光にもある程度対応できる。ダレーンのモデルでは黒塗り部が日中に膨張してガスを遮断し、夜間は縮んで供給を再開する。これにより灯台は夜間だけ燃焼し、ガスの大幅節約が可能になった。現代の光センサー式街灯の原型ともいえる発明である。

ガス貯蔵器

高圧ガスを安全に蓄える容器で、圧力変動を平滑化しながら連続供給を行う役割を持つ。アセチレンの場合、多孔質媒体に吸蔵して分解反応を抑制することが重要である。AGAアキュムレータでは石綿とアセトンが用いられ、実用最大圧力3 MPaでの安全輸送が可能になった。貯蔵器は自動調節機と連携して灯台バーナーへ安定したガスを送り出した。この技術は酸素・水素など他の可燃性ガスボンベの設計指針にも応用された。

灯台照明

船舶が安全に航行するために沿岸や暗礁の位置を知らせる光源技術。19世紀は油や鯨油が使われ、20世紀初頭にアセチレンガス灯へ移行、さらに電気ランプやLEDへと発展した。光の強度、閃光パターン、色は国際規格で定められ、遠距離から識別できるように設計される。ダレーンの自動化技術は人手による点灯作業を不要にし、深夜の過酷な労働を劇的に減らした。今日のGPS時代でも、バックアップとして物理的な灯台は重要な役割を担っている。