1913年ノーベル物理学賞
受賞理由
低温における物性の研究、特にその成果である液体ヘリウムの生成
受賞者
オランダ
解説
とても寒い温度では、物や水はふだんと違った様子になります。オネスさんは、世界で初めてヘリウムという気体をマイナス269度くらいまで冷やして液体にしました。これにより、寒い世界で物がどうふるまうか詳しく調べられるようになりました。たとえば電気がスイスイ流れる「超伝導」も、この研究から見つかりました。私たちが使うMRIなどの機械は、この発見があるからこそ動いています。
関連キーワード
低温物理学
絶対零度に近い温度で物質が示す特異な性質を研究する分野です。電気抵抗や磁気秩序、量子トンネル現象などが常温とは大きく異なります。オネスの液体ヘリウム生成が学問的基盤を築きました。現在は量子コンピュータや天体物理のモデルにも応用されています。極低温は物理法則の限界を探る理想的な実験室でもあります。
液体ヘリウム
ヘリウムを4.2 K以下に冷却すると得られる無色透明の液体です。非常に低い沸点と高い熱伝導率を持ち、実験装置の冷却に最適です。オネスが1908年に初めて大量生産に成功しました。2.17 Kでは超流動相に転移し、粘性ゼロという驚異的挙動を示します。医療用MRIや超伝導磁石の冷却媒体として今も広く使用されています。
超流動
液体ヘリウムが2.17 Kより低い温度で示す摩擦ゼロの流動状態です。細い毛細管内を無限遠まで流れ続けたり、容器の壁を這い上がる“Rollin膜”が有名です。理論的にはボース・アインシュタイン凝縮の巨視的量子現象と解釈されます。1938年にカピッツァらが発見しましたが、オネスの液体ヘリウム技術が前提となりました。現在は中性原子気体や中性子星内部のモデルにも応用されています。
超伝導
ある温度以下で金属や合金の電気抵抗が完全にゼロになる現象です。オネスが1911年に水銀で初観測しました。磁場を排除するマイスナー効果も特徴で、磁気浮上輸送や高性能電磁石に応用されます。理論的説明は1957年のBCS理論まで待たねばなりませんでした。近年は高温超伝導体がエネルギー損失低減に期待されています。
クライオスタット
極低温を長時間維持しながら試料を測定する装置で、真空断熱や多層遮蔽で熱流を最小化します。オネスのデュワー型装置が原型となり、多くの研究所で改良されました。現在は液体ヘリウム式と希釈冷凍機式が主流です。高エネルギー物理実験や衛星搭載赤外線望遠鏡にも不可欠です。安定した温度環境が精密測定の再現性を保証します。
臨界温度
相転移が起こる温度を指し、超伝導では抵抗がゼロになる境界温度を意味します。オネスは水銀の臨界温度を4.2 Kと測定しました。材料ごとに値が異なり、合金や化合物で高い値を目指す研究が続いています。高温超伝導体では液体窒素温度域まで上昇しました。臨界温度は量子状態のエネルギーギャップに直結し、理論検証の重要指標です。
ヘリウム液化
気体ヘリウムを圧縮と膨張で冷やし、臨界点下に達して液体にする技術です。1908年のオネスによる成功まで各国が競争しました。この技術確立で4 K帯の物理実験が可能になり、新元素発見や宇宙背景放射測定にも影響を与えました。産業面ではロケット燃料タンクの加圧や光ファイバー製造に活用されています。液化装置の効率化は低温研究コスト削減の鍵となります。
ケルビン温度
絶対零度を0 Kとし、温度差をセルシウス度と同じ間隔で表す国際的温度尺度です。低温物理では0〜20 Kの領域が頻繁に扱われます。オネスは蒸気圧温度計を使い、極低温域のケルビンスケールを実験的に確立しました。この尺度により研究者間で温度データを正確に比較できるようになりました。ITS-90など現代の国際温度基準でも基本概念は変わりません。