1918年ノーベル物理学賞

受賞理由

エネルギー量子の発見によって物理学の進展に寄与した功績(Annalen der Physik 1 (1900) 719 および 4 (1901) 553)

受賞者

マックス・プランク
マックス・プランク

ドイツ帝国ドイツ帝国

解説

私たちの身のまわりにある光や熱は、とても小さな「つぶ」の集まりとしても考えられます。1900年にマックス・プランクは、このつぶを「エネルギー量子」と名付け、光のエネルギーは連続ではなく小さく区切られていると提案しました。これは、お金を1円玉でしか払えないように、エネルギーも最小のまとまりごとにやり取りされるというイメージです。彼のアイデアは、当時うまく説明できなかった黒い鉄を熱したときの色の変化(黒体放射)をうまく説明しました。この発見から、後にテレビやコンピューター、LEDなどの技術が生まれる量子物理学が始まりました。

関連キーワード

エネルギー量子

プランクが導入した、エネルギーが連続ではなく最小単位ごとにやり取りされるという概念。振動数 ν の光や振動子は、エネルギー hν の倍数しか取れないと仮定される。これにより黒体放射スペクトルの理論値が観測結果と完全に一致した。エネルギー量子は後にアインシュタインによって「光子」の粒子像と結び付けられる。現代では電子遷移、フォノン励起、量子ビット操作など、多様な物理現象を説明する基本単位として用いられる。

黒体放射

あらゆる波長の光を完全に吸収し、熱平衡状態で特徴的なスペクトルを放射する理想的な物体を黒体という。19世紀末にこのスペクトルを古典力学で計算すると、高周波で無限大のエネルギーが出る「紫外線破綻」が生じた。プランクの量子仮説はこの不一致を解消し、実測曲線を正確に再現した。黒体放射は恒星や宇宙マイクロ波背景放射など天体物理の基本モデルにも用いられる。また熱輻射温度計測や赤外線センサー設計などの工学応用でも重要な基礎となっている。

プランク定数

プランクの導出した量子化則に現れる比例定数 h ≈ 6.626×10^−34 J·s。エネルギーと振動数、運動量と波長を結ぶ橋渡しをする作用量子である。ド・ブロイ関係式 p = h/λ やハイゼンベルクの不確定性原理 ΔxΔp ≥ h/4π に現れる。2019年のSI基本単位改定では、この定数が固定値として定義に組み込まれ、キログラムの新しい基準になった。量子計算のゲート速度や絶対雑音限界など、先端研究でも h は不可欠なスケールパラメータとして現れる。

紫外線破綻

レイリー=ジーンズの古典理論が予測した、高周波領域での黒体放射エネルギーの無限大発散問題。実験ではエネルギーは有限でピークを持つため、理論と矛盾していた。この破綻は、エネルギーが連続であるという前提の限界を示す決定的な証拠となった。プランクの量子仮説は発散を抑え、観測データに整合するスペクトルを提示した。現在では古典統計力学の適用範囲を示す歴史的な教訓として、統計物理の教育で頻繁に取り上げられる。

量子化

物理量が連続ではなく離散的な値のみを取るという原理。プランクはエネルギーの量子化を提唱し、後にボーアは角運動量の量子化を導入した。量子化はシュレーディンガー方程式の固有値問題や固体のバンド構造で本質的な役割を果たす。マクロな世界では連続に見えるが、極小スケールでは量子化が支配的であることが数多くの実験で確認されている。量子化概念は超伝導量子干渉計(SQUID)や量子ホール効果の整数ステップ等、多くの精密計測技術に応用されている。

ボルツマン定数

k_B ≈ 1.380649×10^−23 J/K で表される統計力学の基本定数。温度とエネルギーのスケールを結びつけ、平均エネルギー計算などに登場する。プランクの導出式では、振動子の平均エネルギー ⟨E⟩ = hν/[exp(hν/kT) − 1] に k_B が現れる。2019年のSI改定で k_B も固定値となり、ケルビンの定義の基礎となった。熱雑音(ジョンソン雑音)や確率論的情報理論のエントロピー式にも欠かせないパラメータである。

プランクの法則

黒体放射スペクトルのエネルギー密度を周波数または波長で表す公式 I(ν,T) = (2hν^3/c^2)/(e^{hν/kT}−1)。低周波ではレイリー=ジーンズ公式、高周波ではウィーンの公式に近づく連続性を持つ。実験結果に完全に一致し、量子仮説の最初の大きな成功例となった。宇宙マイクロ波背景放射の観測は、この法則が宇宙規模でも成立していることを示した。工学的には赤外線放射温度計、熱センサー校正などの計測に不可欠である。