1923年ノーベル物理学賞
受賞理由
電気素量および光電効果に関する研究(Phys. Mag. 19巻6号〈1910年〉209頁、Phys. Rev. 2巻〈1913年〉109-143頁 など)
受賞者
アメリカ合衆国
解説
電気を流すときに通る「電子」は、みんな同じ大きさの小さな電気の粒を持っています。ミリカンは油のしずくを顕微鏡で見ながら電気の力で浮かせ、その粒の電気の大きさを世界で初めて正確に測りました。この数は「電気素量」と呼ばれ、電池やコンセントの仕組みを理解する基礎になっています。また、金属に光を当てると電子が飛び出す現象を調べ、光にも粒の性質があることを確かめました。これらの研究は、カメラの光センサーや太陽電池など、私たちの日常を支える技術につながっています。
関連キーワード
電気素量
電気素量は電子1個が持つ最小単位の電荷で、値は約1.602×10⁻¹⁹クーロンです。ミリカンの油滴実験によって初めて高精度で測定されました。電気素量はすべての電荷量が整数倍で表されることを示す基礎定数です。この定数を使うことでファラデー定数やアボガドロ数など他の物理・化学定数が連鎖的に決定できます。現在のSI単位系では電流の定義を量子化電荷に基づく新標準へ移行する計画が進んでおり、電気素量はますます重要性を増しています。
光電効果
光電効果とは、光が金属表面に当たったときに電子が放出される現象です。エネルギーの高い光ほど飛び出す電子の運動エネルギーが大きくなるという特徴があります。ミリカンは光の周波数と電子エネルギーの線形関係を実験的に確立し、E=hν−ϕの式を検証しました。これによりアインシュタインの光量子仮説が支持され、量子力学の黎明期を加速しました。現在の太陽電池や光電子増倍管、フォトカソードなど多数の光検出技術は光電効果の応用例です。
油滴実験
油滴実験はミリカンが考案した方法で、微小な油の粒子を電場中に浮かせて電子の電荷を測定します。粒子が重力で落下する速度と、電場で持ち上げられる速度を比較することで、粒子が帯びている電荷を計算できます。その電荷が常に最小値の整数倍であることから電気素量が導かれました。この実験は当時の測定技術の粋を集めたもので、顕微鏡観察、精密電源、空気粘性の補正など多くの工夫が凝らされています。物理学実験教育では今も定番テーマとして扱われ、定数測定の歴史的重要例とされています。
ワーク関数
ワーク関数は金属から電子を取り出すのに必要な最小エネルギーで、単位は電子ボルトで表されます。光電効果の式E=hν−ϕにおけるϕがワーク関数に相当します。金属の種類や表面状態、温度によって値が変わるため、表面物理学や材料科学でも重要なパラメータです。ミリカンの測定では複数の金属を使ってϕを決定し、材料ごとに異なる直線の切片が得られることを示しました。今日では半導体デバイスの界面設計や電子放出源の最適化に不可欠な指標となっています。
電子
電子は負の電荷を持つ基本粒子で、質量は9.109×10⁻³¹kgです。原子を構成する要素であり、電気回路で電流を運ぶ担い手でもあります。ミリカンの研究によって電子が持つ電荷の大きさが正確に決まり、電気量の概念が量子化されました。その後の実験で電子はスピン1/2をもつフェルミ粒子であること、波動として振る舞うことなどが判明し、量子力学の中心的存在になりました。現在の量子コンピュータやスピントロニクス研究でも電子の性質を高度に制御する試みが続けられています。
プランク定数
プランク定数hは量子論の基本定数で、エネルギーと周波数を結び付ける比例定数です。ミリカンの光電効果測定はhの数値決定に大きく貢献しました。hの正確な値は波長標準や時間標準の相互変換に用いられ、メートルや秒の定義改定にも関わっています。2019年のSI再定義ではhに固定値が与えられ、キログラムの定義が物理試料から解放されました。量子ホール効果やジョセフソン効果と並び、hは量子電磁気学の測定体系の中心柱となっています。