1954年ノーベル物理学賞(2)

受賞理由

コインシデンス法による原子核反応とそれによる発見

受賞者

ヴァルター・ボーテ
ヴァルター・ボーテ

西ドイツ西ドイツ

解説

ヴァルター・ボーテは、目に見えない小さな粒を "同時に" 数える特別な方法を考えました。それによって、原子の中で起こる反応をはっきりと確かめることができました。これは、二人が同時に手をたたいたときだけ音を聞くような仕組みです。この技術があったおかげで、科学者は原子の仕組みをもっとよく知ることができました。今の医療やエネルギーづくりにも役立っています。

関連キーワード

コインシデンス法

複数の放射線検出器が短い時間幅内で同時に信号を出した時だけイベントを記録する技術です。バックグラウンド事象を劇的に除去し、粒子間の相関や崩壊系列を解析できます。時間幅は検出器の時定数や電子回路の立ち上がりで決まり、ナノ秒以下まで短縮されています。現在の加速器実験のトリガーやPET装置のタイムオブフライト測定に不可欠です。量子エンタングルメント光子の同時計数にも応用されています。

ゲイガー=ミュラー計数管

希ガスを封入した円筒に高電圧を加え、電離により電気パルスを得る放射線検出器です。感度は高いがエネルギー分解能は低く、主に有無判定に使われます。ボーテは複数の管を直列配置しコインシデンスを取ることで、ランダムパルスを抑えました。今日でも教育や環境モニタリング用途で広く利用されています。電子・フォトン・アルファ粒子など多様な放射線を検出可能です。

原子核反応

原子核が他の核や粒子と衝突し、別の核や放射線を放出する過程を指します。エネルギー尺度はMeVオーダーで、化学反応よりはるかに大きなエネルギーが関わります。ボーテの研究で反応生成物の同時計数が可能となり、反跳核や放射光子の相関が詳しく調べられました。核融合・核分裂の理解や放射性同位体の生成機構解明につながります。医療用アイソトープや原子力エネルギー技術の基礎です。

宇宙線

宇宙空間から地球に到来する高エネルギー荷電粒子やγ線の総称。一次宇宙線の主体は陽子であり、大気と衝突して二次粒子のシャワーを生じます。ボーテはコインシデンス装置で宇宙線が個別粒子であることを示し、宇宙線物理の黎明期を築きました。現在はチェレンコフ望遠鏡や地下ミューオン検出器で研究が続いています。宇宙線は天体加速器の情報を伝え、航空宇宙や気候への影響も議論されています。

粒子検出

放射線の種類やエネルギー、到来方向を測定する技術の総称です。ガス検出器、シンチレータ、半導体検出器など多様な方式があります。同時計数や時間分解を組み合わせることで、複雑なイベントを識別しやすくなります。ボーテの成果は電子回路によるリアルタイム処理の始まりでした。今日の大型ハドロン衝突型加速器では数億チャンネルの検出素子がナノ秒精度で同期しています。

反同時計数

反同時計数は指定した検出器が信号を出さない場合にのみイベントを受理するロジックです。バックグラウンド抑制や粒子識別に有効で、γ線天文衛星や暗黒物質探索実験で広く利用されます。コインシデンスと組み合わせてトリガー条件を複雑化することで、希少事象の収集効率が向上します。ボーテの時代の真空管回路は、今日ではFPGAやASICで実装され高速化されています。

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