1955年ノーベル物理学賞(2)
受賞理由
彼が考案した電子の磁気モーメントの正確な決定法
受賞者
ポリカプ・クッシュ
アメリカ合衆国
解説
電子はとても小さな粒ですが、方位磁針のように小さな磁石の性質を持っています。クッシュさんは電子がどれくらい強い磁石なのかを測る新しい実験方法を考え出しました。それは、針がほんのわずかに揺れる様子を虫眼鏡でじっと観察するような、とても細かい測定でした。彼の結果は、それまでの理論が完全ではないことを示し、科学者たちにもっと正確な計算を作らせるきっかけになりました。このおかげで、電子や光のふるまいについて私たちは深く学べるようになりました。
関連キーワード
電子磁気モーメント
電子が持つ小さな磁石としての強さを表す量。値はBohr磁子μBとg因子の積で表され、精密測定は量子論の検証に欠かせない。
ボーア磁子
原子磁気モーメントを表す自然単位で、eħ/2m_eとして定義される。電子のスピンや軌道磁石作用を評価する基準になる。
g因子
磁気モーメントと角運動量の比例係数で、自由電子では2を中心に量子補正によってずれが生じる。わずかな差を測定することで新しい物理の手がかりが得られる。
原子ビーム磁気共鳴
高速に飛ぶ中性原子ビームにRF電磁場を当て、スピンの向きを操作して共鳴周波数を測定する手法。ラビやクッシュの研究で確立され、NMRや原子時計の源流となった。
ゼーマン効果
外部磁場中で原子のエネルギー準位が分裂する現象。分裂幅の測定は磁気モーメントやg因子を求める直接的な手段となる。
異常磁気モーメント
g因子が2からわずかにずれる量Δg = g−2で表され、真空の量子揺らぎによる放射補正が主因となる。QEDや標準模型の精密検証、さらには新粒子探索の感度向上に用いられる。