1956年ノーベル物理学賞
受賞理由
半導体の研究およびトランジスタ効果の発見
受賞者
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
解説
トランジスタは、電気信号を弱いものから強いものに変える小さな部品です。今のスマートフォンやゲーム機の中には、この部品が何十億個も入っています。1956年にショックレー、バーディーン、ブラッテンの3人は、トランジスタが動く仕組みを見つけました。彼らは「半導体」という、金属でもガラスでもない特別な材料を使いました。半導体の中を流れる電子の数をうまくコントロールすると、スイッチのように電気を止めたり流したりできます。この発見のおかげで、私たちは小さくて軽いコンピューターやテレビを作れるようになりました。
関連キーワード
半導体
半導体は導体と絶縁体の中間の電気伝導性を持つ物質である。温度や光照射、ドーピングによってキャリア濃度が制御できるため電子素子の中核材料となる。シリコンが最も広く使われるが、ゲルマニウムやガリウムヒ素など化合物半導体も高周波用途で重要である。バンドギャップエネルギーの大きさがデバイスの動作温度や発光波長を決定する。トランジスタや太陽電池、LEDなど多様な機能素子が半導体物理の応用例である。
トランジスタ効果
トランジスタ効果とは、半導体内部の少量の入力電流または電圧で、より大きな出力電流を制御できる現象である。具体的には、ベース端子に流れる微小電流がエミッタ‐コレクタ間の大電流を開閉・増幅する。真空管の熱電子放出に頼らず室温で動作するため、小型かつ省電力の利点を持つ。効果を実現するには高品質のpn接合と低い表面再結合速度が必要となる。デジタル論理回路ではオン・オフのスイッチング、アナログ回路では信号増幅の役割を果たす。
p–n接合
p–n接合はp型半導体とn型半導体を直接接合した構造である。接合部ではキャリアが拡散しあい、空乏層と呼ばれる帯電領域が形成される。この領域に内在する電場がキャリアの流れを整流し、一方向の電流を可能にする。バイアスを加えることで空乏層幅が変化し、トランジスタやダイオードの動作を制御する。光照射により内蔵電圧で電荷が分離されるため、太陽電池の基本構造にも用いられる。
バンドギャップ
バンドギャップは半導体の価電子帯と伝導帯の間に存在するエネルギー差である。キャリアが価電子帯から伝導帯へ励起されるには、このエネルギー差以上のエネルギーが必要となる。ギャップが大きいと高温でもリーク電流が少なく、絶縁性が高まる。一方、ギャップが小さい材料は低電圧でスイッチングでき、高速デバイスに適する。発光ダイオードではギャップの大きさが発光色を決める重要なパラメータだ。
ドーピング
ドーピングは半導体に微量の不純物原子を添加し、自由キャリア濃度を制御する工程である。n型化にはリンやヒ素など5族元素、p型化にはホウ素やアルミニウムなど3族元素が用いられる。これにより抵抗率を数桁変化させ、電流経路を設計通りに導くことが可能になる。イオン注入や拡散は、ドーピングプロファイルの精密制御を実現する主要技術である。高度なドーピング制御は、浅いpn接合や超薄型チャネルの形成に欠かせない。
増幅
増幅とは入力信号の電圧や電流を大きくして出力する機能を指す。トランジスタではベース端子の小信号がコレクタ回路の大電流を制御し、電流増幅率βが得られる。増幅は無線通信の高周波信号や音声機器の音量調整に不可欠である。帯域幅やひずみ率、雑音指数などが増幅器の性能評価指標となる。集積回路では差動増幅器やオペアンプなどのブロックが複雑なアナログ信号処理を支える。
集積回路
集積回路(IC)は多数のトランジスタや受動素子を一つの半導体基板上に形成した電子回路である。1960年代の最初のICは数十個の素子だったが、現在のチップには数千億個のトランジスタが組み込まれる。微細化に伴い消費電力あたりの計算能力が指数関数的に向上した。IC技術はコンピュータ、スマートフォン、家電、自動車などほぼ全ての電子機器に組み込まれている。半導体製造のクリーンルーム、フォトリソグラフィ、エッチング工程はIC実現のために開発された重要プロセスである。
シリコン
シリコンは地殻中で酸素に次いで多い元素で、半導体産業の主材料である。高品質の単結晶シリコンはチョクラルスキー法やフロートゾーン法で育成される。シリコンのバンドギャップは1.12eVで、室温動作に適したリーク電流とキャリア移動度のバランスを持つ。シリコン酸化膜は優れた絶縁性と熱的安定性を提供し、MOSFETゲート酸化膜として不可欠である。近年はSiGeやSOIなどシリコン派生プラットフォームが高性能デバイスに用いられている。
ゲルマニウム
ゲルマニウムはトランジスタの初期開発に用いられた元素で、バンドギャップは0.66eVと比較的小さい。バーディーンとブラッテンの点接触トランジスタはゲルマニウム結晶を用いて作製された。ゲルマニウムは高い電子・正孔移動度を持ち、高速デバイスや光検出器に適している。ただし、熱に弱くリーク電流が増えやすいため、シリコンに置き換えられていった。最近では、シリコンフォトニクスやトンネルFETにおいて、ゲルマニウムの光吸収特性の再評価が進んでいる。
固体電子工学
固体電子工学は固体物質内の電子の挙動を研究し、電子デバイスを設計・製造する学問分野である。トランジスタの発明により、真空管中心の電子工学から固体素子中心へとパラダイムが移った。この分野では量子力学、統計力学、電磁気学を駆使してキャリア輸送とエネルギーバンドを解析する。発展は情報処理能力を飛躍的に高め、インターネットや人工知能などの技術革新を可能にした。現在も新材料やナノスケール構造の探究により、柔軟電子デバイスや量子コンピュータへと研究対象が広がっている。